「オール・ザ・キングスメン(1949)」のストーリー

新聞記者のジャック・バードン(ジョン・アイアランド)がウイリー・スターク(ブロデリック・クロフォード)と初めて会ったのは、ウイリーがメイソン州の会計主任だった頃である。彼には学校教師をしている妻ルーシー(アン・シーモア)と、一人息子のトム(ジョン・デレク)がいた。実直な下級役人だったウイリーは、メイスン市に新しく建築された小学校の校舎建設に不正を見抜き、それを激しく批難したことで、人々の注目を集め始めた。そして彼の言う通り、避難訓練の最中に、欠陥のあった壁の崩落事故があり、数百人の死者を出す大惨事が起きたため、彼の人気はますます大きくなっていった。ウイリーは、最初の州知事選に敗れたのを機に、苦難の末、弁護士になっていた。だが人々は彼を忘れなかった。「信頼できるウイリーを知事に!」の声は高まり、遂に彼はメイスン州の知事になった。選挙戦は苦しかった。中でも秘書サディ・バーグ(マーセデス・マッケンブリッジ)とジャックの活躍は目覚ましかった。ジャックは新聞記者を辞め、ウイリーの参謀となっていたのだ。そうしてウイリーが知事となって数年が過ぎ、メイスン州におけるウイリーの権力は、絶大なものとなっていた。今や彼は王の様に民衆の上に君臨していた。ウイリーがあれほど忌み嫌っていたはずの汚職、ワイロ、恐かつ等に自身の手を染め、派手な女性スキャンダルも公然と口にされるようになっていたのだ。いつの日かそれは、良識ある人々の批判の的となって行く。そうしてついに州民から絶大な信頼を寄せられている判事が、ウイリーの政敵を支援する声明を発表した。折も折、今ではフットボールの花形プレイヤーとなった息子のトムは飲酒の上で交通事故を引き起こし、同乗していた若い女を死なせてしまった。数日後、事故死した娘の父の撲殺死体が発見されたことによって、ウイリー糾弾の声は最高潮に達した。窮地に立たされたウイリーは、まず判事を味方につけるための策略をめぐらす。判事の昔のスキャンダルを暴いて恐喝めいた条件を示して味方に引き入れようとしたが、潔癖な判事は自殺してしまった。「善は悪の上に成り立つ」というウイリーに嫌気がさしたジャックは、彼の許を離れる決心をするが、恋人のアン(ジョアン・ドルー)がウイリーの愛人であることを知り愕然とする。ジャックの友人でアンの兄であるスタントン医師(シェパード・ストラドウィック)は、ウイリーの要請でメイスン市の病院長となったことを後悔していた。そうして敬愛する判事を死に追いやり、妹の純潔を奪ったウイリーに憎しみをつのらせていった。やがて、委員会が開かれている議事堂に、2発の銃声が響き渡った。大きな悲憤に襲われたスタントン医師の射った銃弾が、ウイリーの野望を砕いた一瞬だった。