「ロリーポップ」のストーリー

南アフリカのレソト。村の教会で一人の黒人女が白人の子ジャニー(ノーマン・ノックス)を残して息を引きとった。アルベルト神父(ホセ・フェラー)とシスター・マルガリータ(ベス・フィニー)は彼を育てることにした。彼はすくすくと育ち、とりわけツェポ(ムンツ・ベン・ルイス・ウンデベル)と仲がよかった。愛犬のシュガーボールをつれてはしゃぎ廻っている二人は、肌の色こそ違え、兄弟のようだった。ある日、この村にアメリカの平和部隊からキャロル(カレン・ヴァレンティーヌ)という女学生がボランティアにやってきた。しかし彼女の教育は押しつけがましく、村人には通じない。ある日、ツェポは大怪我をしてしまった。町の病院に担ぎ込まれた。腎臓破裂で今すぐ手術が必要なのだが、専門医はニューヨークの学会に出かけていって留守だった。そのときキャロルはアメリカ軍の飛行機でジャニーをニューヨークに運ぼうと提案した。ニューヨークでのジャニーの手術は成功したが、意識が戻らなかった。「ツェポ……ツェポ……」と呟くジャニーを見てキャロルはツェポをニューヨークに呼ぼうと思いたった。ツェポとアルベルト神父はニューヨークに旅立った。ツェポにとっては生まれて初めての大都会だ。空港で迷子になってしまったが、偶然会ったレソト出身の店員に助けられ、病院に辿りついた。ツェポがジャニーと呼ぶと、それに応えるようにジャニーの眼が開いた。思わずわき上がる歓声。ツェポはジャニーにロリーポップを手渡した。ジャニーとツェポが初めて仲よくなった日、ジャニーがくれたあのロリーポップだ。一行は無事レソトに帰ってきた。ある日、アルベルト神父のもとに、ジャニーの祖母だと名乗る老婦人が現われた。彼女はジャニーの新聞記事を読んで駈けつけたという。彼女の息子夫婦は事故で死んでしまい孫の安否を気づかっていたのだ。そのやりとりを聞いていたジャニーは、どこかに連れて行かれると思い込み、ツェポと二人で山に逃げ込んだ。吹きつける雪の中で、ツェポは病後のジャニーの体を心配してとめようとするが、ジャニーは聞きいれない。ツェポは体力の尽きたジャニーを抱えながら、必死に雪の中をさまよった。ツェポはジャニーの体を冷やさないために、自分の服を着せ裸になった自分もジャニーをかばうように岩蔭に身をひそめた。翌日、村ではひとつの墓を囲んで、人々が深い悲しみにうちひしがれていた。“彼は友情のために自らの生命を……”。神父の震える声の傍で、ジャニーは唇をかみしめていた。