「永遠に微笑む」のストーリー

30年の間ジョン・カートレット卿は苦い思い出の虜となって憂鬱な生活を続けて来 た。思い出というのは彼が青春の頃相愛の女であったムニーンが彼との結婚式の宵に恋仇ジェレミイ・ウェインの兇刃に倒れたことであった。しかし彼の憂鬱はムニーンの妹の娘で孤児となったキャスリーン・クレアが彼の親友オウエンによって彼の許へ連れて来られたので幾分慰められた。4才の時から引取られたキャスリーンはいつか美しい一人前の女に育った。ジョンの彼女に対する愛は真実の父の如きものだった。ところが平和なカートレット家にジョンの昔の恋仇の一子ケネス・ウェインが訪れ来たので許らずも波乱が起こった。ケネスは亡き父親の昔の事については何事も知らない純真な好青年だった。そして彼とキャスリーンとはいつしかお互いに熱烈に愛し合う仲となった。このことを知るとジョンの胸は掻きむしられるように、思い出の古傷が痛むのだった。そして憤ろしさからジョンはケネスがキャスリーンと交際することを絶対に禁じてしまった。本意なくも、別れ言葉さえもかわさず、悲恋を胸に抱いてケネスは戦地へ赴いた。4年間ケネスは勇敢に戦闘の巷を駆馳したが、武運なく彼は負傷して障害者となって悲しい凱旋をした。4年の歳月もキャスリーンがケネスを思う愛の焔を消し止めることは出来なかった。相見れば尚のこと思いはつのって彼女は育ての親ジョン卿に背いてまでもケネスの許へ走る決心をした。ケネスの愛とても変るはずはなかったが廃人となった己れを顧みればキャスリーンの夫となる資格はないと思うのだった。彼は愛想つかしをして彼女も別れようとしたが、ジョン卿も死に面してウェインに封する憎悪を忘れ、永遠の恋人ムニーンの幻影に招かれて幸福に瞑目したのであった。