ムック|タブーこそを撃て! 原一男と疾走する映画(ムーヴィー)たち

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鬼才・原一男 監督の傑作郡~新作『ニッポン国VS泉南石綿村』までを再発見する。

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表紙・巻頭特集

定価1,750円+税 ページ数128
刊行キネマ旬報社 発行日2018年3月16日
判型B5 ISBN978-4-87376-460-3

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『さようならCP』(72)『極私的エロス・恋歌1974』(74)『ゆきゆきて、神軍』(87)『全身小説家』(94)、そして新作ドキュメンタリー『ニッポン国VS泉南石綿村』(17)……実に24年ぶりとなる新作の公開日同日。本書では最新作を含む圧倒的に「面白い」疾走の軌跡に追走します。
 

 車椅子を捨てた脳性麻痺者が、地面を這いながら横断歩道を渡る。障害者支援のビラを手に、新宿地下通路を進んでゆく。そして真っ昼間の路上で全裸になる――処女作原一男は『さようならCP』(72)でいきなり、健常者中心の社会を激しく挑発しながら登場しました。
 つづく『極私的エロス・恋歌1974』(74)では激しく揺れ動いてゆく元恋人・武田美恵子と現恋人・小林佐智子、そして原一男自身の三角関係をドキュメント。彼女たちが自力で赤ん坊をひり出すそのクライマックスに、正面からカメラを向けています。
 そして社会現象的なヒットを記録した『ゆきゆきて、神軍』(87)。天皇にパチンコ玉を発射、返す刀で田中角栄の首を狙う自称「神軍平等兵」=奥崎謙三が、ド派手な宣伝カーを駆って日本各地に出没、元上官をとことん追及する「凶行」を記録しました。
 さらに『全身小説家』(94)では虚実を綱渡りすることでしか生きられない作家・井上光晴の業、愛と死を、情感を込めて追想しています。
 「アンチ! アンチ! アンチ! 」を叫ぶ身体を生理で捉える=原監督曰く“アクションドキュメンタリー"。本書ではあらためてその数々のアクションに、光を当てていきます。
 原一男監督へのロングインタビュー、庵野秀明・柳美里・塚本晋也との対談、四方田犬彦、三浦雅士、大塚英志による論考、辺見庸が語る「原一男映画」などなど、充実の誌面。
 既に原一男映画に憑かれたあなたのからだを、神軍たちが駆け抜けます!

◆原一男監督のコメント
本作『ニッポン国VS泉南石綿村』はこれまでの四作(『さようならCP』『極私的エロス・恋歌1974』『ゆきゆきて、神軍』『全身小説家』)が1周目とすれば、まさに2周目のスタートになる作品という位置づけになるはず、と思っている。
ということは、1周目の全作品徹底検証することを迫られるわけである。
今回出版されるこの本を片手にたずさえ疾走していくだろう自分のイメージが、脳裏に浮かんでいる。

内容 / Detail

■全仕事を振り返る本に寄せて 原一男

■疾走するドキュメンタリー1 微かな動き、小さな声に感応して 『ニッポン国VS泉南石綿村』

●私の感情・肉体=カメラの衝動に身を任せ、アクションを捉えたい インタビュー 原一男
●原一男における死の韻律と過剰なるもの 『ニッポン国VS泉南石綿村』作品評 四方田犬彦

■あらゆる抵抗が無化される時代をどう捉えるか 辺見庸、原一男映画を語る

■ドキュメンタリーとアニメーション それぞれのアイデンティティを探して 対談 原一男、庵野秀明

■原一男 映画を読む、映画を語る
●読む、映画
●語る映画
・「狂気」ってなんだ? 収容病棟という「逆」ユートピア 対談 原一男、王兵
・表現の自由をめぐって 『ナヌムの家』上映妨害事件を通して考える 座談会 原一男、鈴木邦男、田中美津

■疾走するフィルモグラフィー2 戦争、私刑(リンチ)、人肉食 『ゆきゆきて、神軍』
●神軍にはすべてがある! 対談 原一男、塚本晋也
●あまりに劇的なドキュメント 座談会 原一男、佐木隆三、品田雄吉
●劇的であること 『ゆきゆきて、神軍』作品論 大塚英志

■疾走するフィルモグラフィー3 行動する障害者、記録するカメラ 『さようならCP』
●それぞれのたたかい 座談会 原一男、玉木幸則、真野修一

■疾走するフィルモグラフィー4 虚構は現実から出発する 『全身小説家』『極私的エロス・恋歌1947』
●眼のドキュメンタリー~『全身小説家』に寄せて~ 三浦雅士
●現実と虚構の親密さについて 『全身小説家』『極私的エロス恋歌1974』 対談 原一男、柳美里

■極私的手記
1人恋しさは、満たされてしまった 武田美由紀
2映画がロマンなら、生活もロマンさ! 小林佐智子

今日は映画何の日?

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