いよいよ公開! 推し活するすべての人必見の青春群像劇「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」

テレビアニメ化もされた同名人気漫画の実写版が、ドラマ化に続いて映画化。元アイドルの松村沙友理が、真逆の立場ともいえる赤ジャージの伝説的なファンを熱演する「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」が、5月12日より劇場公開される。ドラマ版未見でも楽しめる劇場版なのか、そもそも長編映画にふさわしい作品となっているのか。ドラマ版のファン、原作やアニメ版のファン、そしてドラマ版を未見の方にとっても、皆が気になるところだろう。

ドラマ版未見でも楽しめる劇場版

原作は、平尾アウリが『COMICリュウWEB』に連載中で、“推し武道”の略称でも愛される人気漫画。既刊9巻のコミック累計発行部数は100万部を突破しており、2020年1~3月にテレビアニメ版が放送、2022年10~12月にはテレビドラマとして実写化、放送された。今回の劇場版は、そのドラマ版と同キャスト&同スタッフによるもので、ドラマ版の続きを描いている。

ドラマ版の続編ということで初見の方にはハードルが高そうに思われるかもしれないが、実はそうでもない。もちろんドラマ版を見ていた方がより楽しめるのは間違いないが、今回の劇場版の冒頭には簡単なドラマ版の振り返りもあるし、熱狂的なファンと、そのファンに推されるアイドルたちの物語であることは、初見でもすぐに理解できるだろう。応援する側と応援される側、どちらにもそれぞれに夢を追う熱狂や青春のドラマがあることを、笑いや感動と共に軽快に綴っていく。

舞台となるのは岡山県。フリーターのえりぴよ(松村沙友理)は3年前に、街中のイベントで野外LIVEをしていた7人組のローカル地下アイドルのChamJam[チャムジャム]と出会う。そこでメンバーの舞菜(伊礼姫奈)に人生初のトキメキを感じたえりぴよは、熱狂的な舞菜のドルオタ(アイドルオタク)としてLIVEや握手会などに通い続けるようになり、私服は高校時代の赤ジャージしか持たないほど、収入の全てを舞菜への推し活に捧げてきた。そんなえりぴよの推し活も今回の劇場版では4年目に突入。武道館のステージに立つ夢を持つChamJamが活躍の場を広げていく中、鼻血を流すほどのえりぴよの応援にもさらに力が入る。しかし、その一方で、内気すぎて人気が伸び悩む舞菜は、ケガのため一人だけ活動休止を余儀なくされ、焦りや葛藤が深まっていくこととなる。

映画館でこそ体感できるLIVEシーンの臨場感

アニメ版は原作ファンの評価が高かったが、実写版も負けてない。漫画原作の実写化は、まずそのキャラクターの再現度を問われてしまうことも多いが、えりぴよ役の松村沙友理は思い切りのよい振り切った熱演を見せ、ChamJamのメンバー役は実在するアイドルグループの@onefiveの4人と若手女優の中村里帆&和田美羽&伊礼姫奈が歌とダンスも交えて演じ、共に高評価を受けた。特にそのChamJamの実在感は、実写版独自の魅力といえる。3人の若手女優と4人のアイドルという組み合わせは、演技・歌唱・ダンスなどの技量や経験がそれぞれ全く異なりながらも、絶妙なバランスでローカル地下アイドル役を好演。マイナー・アイドルの悲哀など彼女たちの物語も描かれるため、アイドル好きでなくとも、応援したくなってしまう。

そんなChamJamが今回の劇場版では岡山を飛び出し、初の東京進出を果たす。とはいえ、それは一筋縄ではいかないのだが、成長のための大きな足掛かりを掴む。また、ChamJamの楽曲は、アニメ版で制作された曲を実写版キャストでリメイクしているが、今回は実写版としては初披露の『私たちが武道館にいったら』を聞くことができる。LIVEシーンは映画館で見ると臨場感たっぷりで、応援上映などにもハマりそうだ。大谷健太郎監督にとっても「NANA」(05)「NANA2」(06)などで取り組んできた音楽映画の一つとも言えるだろう。

長尺で濃密に描かれる推す側と推される側の関係性

そして、本作の根幹ともいえるえりぴよと舞菜の関係にも、ドラマ版以上に焦点が当てられ、特に舞菜は本作で大きな転機を迎える。推す側と推される側だが、すれ違う恋模様のようにも見えるふたりの関係性が、1話30分のドラマ版と違い、長尺で濃密さを増して描かれていく。さらに今回はえりぴよの働く姿もたっぷり見られ、オタク仲間のくまさ(ジャンボたかお)と基(豊田裕大)と玲奈(片田陽依)以外では、唯一かもしれないえりぴよの友人かつバイト仲間の美結(あかせあかり)もいい活躍を見せてくれる。

推す側のファンの物語であると共に、推される側の全国区のアイドルを目指す少女たちの物語でもあり、誰もが様々な立場に想いを重ねて応援したくなるような本作。今回の劇場版が初見となる方でも、夢を追う者たちの青春群像劇として楽しめることだろう。また、原作のエピソードにオリジナル要素も交えて描かれるが、前提となるドラマ版自体が一部を除き基本的には原作を忠実に映像化しているので、原作ファン、アニメ版のファン共に、劇場版から見ても違和感なく楽しめる。原作も継続中であり、推しに人生を捧げたえりぴよがどのような道を歩むのか、そしてChamJamは武道館に立つことができるのか。その成長を見届けるため、さらなる続編にも期待したい劇場版だ。

文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社

 

 

「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」

5月12日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー!

出演:松村沙友理、中村里帆、MOMO(@onefive)、KANO(@onefive)、SOYO(@onefive)、GUMI(@onefive)、和田美羽、伊礼姫奈、あかせあかり、片田陽依、西山繭子、豊田裕大、ジャンボたかお(レインボー)
原作:平尾アウリ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(COMICリュウWEB/徳間書店)
監督:大谷健太郎
脚本:本山久美子
音楽:日向萌
主題歌:@onefive「Chance」(avex trax)
製作:「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会
配給:ポニーキャニオン
©平尾アウリ・徳間書店/「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会
公式HP:oshibudo-movie.com
公式Instagram/Twitter:@oshibudo_abc