恐怖とユーモアのハーモニーで新たな進化を遂げたエンタメホラー「貞子DX」

鈴木光司原作の『リング』シリーズから生まれ、いまや世界的ホラーアイコンとなった“貞子”。2012年の「貞子3D」以降、貞子をどう見せるかというテーマで独自に進化してきた映画シリーズが、呪いのビデオを媒介にウイルスを拡散する原点の設定に立ち返りつつも、時代にあわせてアップデート。1週間から24時間にタイムリミットの変異した呪いがSNSで拡散する恐怖を、タイムサスペンス、謎解き、ユーモアも取り入れて描いた、ホラーが苦手な人でも楽しめる新機軸のエンタメ作品となった。その「貞子DX」のDVDレンタルが、3月24日よりスタートする(セルは4月14日発売)。

 

非現実的な呪いに論理的思考で立ち向かう天才ヒロイン

鈴木光司が1991年に発表した同名小説を原作に実写化した1998年の映画「リング」は、見た者が一定期間で必ず死に至る“呪いのビデオ”を介して怨念が拡散されていく衝撃的設定と、TV画面から這い出して呪われた人物を死に至らしめる、白いワンピースに長髪黒髪の怨霊“貞子”が世界を震撼させ、シリーズ化やハリウッドリメイクを果たした。さらには貞子自体が世界的ホラーキャラクターとして独り立ちし、原作や映画を知らない人にまで認知されるほど、様々な形で独自の進化を遂げてきている。

そして、貞子を主軸に進化してきた現在の映画シリーズは、3D化や「呪怨」シリーズとのクロスオーバーなども経てきたが、今回の最新作「貞子DX」では、呪いのビデオを媒介に呪いのウイルスを拡散するという、原点の「リング」とその続編「らせん」(98)の設定をアップデート。「リング」の続編ともパラレルワールドともとれるような世界線で、“貞子”や“呪いのビデオテープ”が都市伝説化した現代を舞台に、タイムリミットが1週間から24時間に変異。さらに“呪いのビデオ”はVHSテープを介さずとも、インターネットやSNSで急速に拡散されていくことになる。

今回の主人公のIQ200の天才大学院生・一条文華(小芝風花)は、“呪いのビデオ”を見た人々が24時間後に不審死を遂げる事件が続出する中、妹もその映像を見てしまったために、24時間以内に呪いを解こうと奔走する。今回の主人公が面白いのは、オカルト否定論者で「すべては科学的に説明できる」と断言し、非現実的な呪いに天才的頭脳を駆使して真っ向から立ち向かうところ。“呪いのビデオ”をウイルスのようなものだと解釈し、その変異には理由があるし、ワクチンもあるはずだと、数々の仮説を立てる。VHSテープを知らない若者たちや、VHSの再生デッキを持っていない人も多いだけに、貞子の呪いのウイルスも、生き残るためや短時間で広めるために変異しているのではないかなどと考察していく。さらには海外ドラマ『24』風の演出も加味したスピード感のあるタイムサスペンス的要素も取り入れ、非現実的な呪いに方程式を見つけ出し、時間に追われながらも論理的思考で解き明かそうとしていくのが面白い。

 

今の時代ならではの身近な恐怖を体感

ホラーとしての魅力では、貞子の呪いがコロナウイルスのようにまん延し、SNSで世界中に短時間で無限に拡散するという、現代に即した身近な恐怖を体感できる。そして、本作がシリーズ中でも特に新鮮かつ異色なのが、『99.9 刑事専門弁護士』シリーズなどの木村ひさし監督ならではともいえる、ホラーコメディ的な恐怖とユーモアのハーモニー。今回は貞子の姿も変異するのだが、呪われた人それぞれに見え方が違うことは、時に不気味で怖く、時にブラックユーモアを感じさせる。呪われた人物が死ぬ直前に前転することも、不気味にも滑稽にも見えるのだが、後にその理由がわかると恐怖に変わる。紙一重ともいえる恐怖と笑いの境界線を行き来する新機軸の作品で、木村作品ではお馴染みのゆるキャラ“ホヤボーヤ”がちょっとしたホラー演出に使われるシーンなども、一瞬ドキリとさせられながら笑ってしまう。音やカット割などの基本に忠実な演出で恐怖や驚きを感じさせようともしており、スプラッター的な怖さや残酷さに頼っていないため、家族や友人などと盛り上がりながら見るのにも最適な、幅広い人にお薦めできるエンタメホラーとなっている。

 

Blu-ray豪華版の特典に注目

4月14日にリリースされるセル版のBlu-ray豪華版には、メイキング映像やイベント映像集などを、付属の特典DVDに収録。メイキング映像では、主人公であるIQ200の天才大学院生・一条文華役の小芝風花や、その相棒的存在となる自称“王子様”占い師・前田王司役を演じた川村壱馬(THE RAMPAGE)らの撮影風景が見られる。共に大阪出身だけに普段は関西弁でやり取りする姿や、クライマックスに登場したある姿での特殊な動きを映像効果に頼らず芝居で表現する小芝の芸達者ぶり、三枚目的な役は恐らく初挑戦の川村がナルシストキャラを確立させていく過程など、撮影の裏側や楽し気な現場の様子が、恐怖番組風にまとめられている。また、本編Blu-rayには、小芝風花と川村壱馬によるオーディオコメンタリーも収録されており、二人が撮影秘話などをたっぷりと明かしてくれている。

 

文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社

 

 
「貞子DX」

●3月24日(金)DVDレンタル、4月14日(金)Blu-ray&DVD発売
▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

Blu-ray豪華版(DVD特典付) 価格:7,480円(税込)
【ディスク】<2枚>(本編Blu-ray1枚+特典DVD1枚)
★封入特典★
・ブックレット
★映像特典★
・メイキング映像
・イベント映像集
・予告編集(予告編・特報/TVスポット)
★音声特典★
・小芝風花、川村壱馬(THE RAMPAGE)オーディオコメンタリー


●通常版DVD 価格:4,180円(税込)
【ディスク】<1枚>(本編DVD1枚)


●2022年/日本/本編100分
●監督:木村ひさし
●脚本:高橋悠也
●音楽:遠藤浩二
●世界観監修:鈴木光司
●出演:小芝風花、川村壱馬(THE RAMPAGE)、黒羽麻璃央、八木優希、渡辺裕之、西田尚美、池内博之
●主題歌:「REPLAY」三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE(©rhythm zone / LDH JAPAN)

●発売・販売元:KADOKAWA
©2022『貞子DX』製作委員会