【第29回】グレイト余生映画ショーin日活ロマンポルノ

 2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げる定期連載記事を、本キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時配信いたします。

 衛星劇場の協力の下、みうらじゅんがロマンポルノ作品を毎回テーマごとに紹介する番組「グレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の過去の貴重なアーカイブから、公式書き起こしをお届けしたします。(隔週更新予定)

■2014年6月放送「熟れ」

 どうも、みうらじゅんと申します。「グレイト余生映画ショー In 日活ロマンポルノ-民俗学入門-」今回のテーマは「熟れ」ている。「熟れて」でございます。とくとご覧くださいませ。

 その時股間がうずいた。今宵の教材は艶めかしき芳醇エロス。『キャンパス·エロチカ 熟れて開く』したたるボディと底なしの欲望。男を知り尽くしたラストなでしこ、ここに見参。経験なくても構わない 性交の鍵は熟女が握るその瞬間から新たな歴史が始まる

 今回ご紹介する作品は『キャンパス·エロチカ 熟れて開く』。1976年の映画でございます。どういう映画かって言うと先ずはポスターを見て下さいね。

 その時代、サイクリングブームもあったんでしょう。女子大生も乗っているようです。で、問題なのは何が熟れているのか、ということでしょう?今は熟女って言ってあからさまに熟れているということを強調しますが、それは映画を御覧になったあなたが、熟れているか、まだまだ熟れていないか判断なさって下さいね。

■How old are you? 熟成度で選ぶ理想の女

「熟れる」というのは段階があります。

「未熟(みじゅく)」···まだ十分でないこと。

「早熟(そうじゅく)」···普通より成熟が早いこと

「晩熟(ばんじゅく)」···普通より成熟が遅いこと

「完熟(かんじゅく)」···十分成熟していること

「爛熟(らんじゅく)」···成熟し衰えの兆しをふくんでいる状態

「腐熟(ふじゅく)」···発酵して腐っている状態

と、資料にはありますが、生き物はいずれ亡くなり、焼かれて「無臭」という状態になるわけです。ま、無から無へ戻ると考えると何も怖いことではありませんね。日活ロマンポルノでは、早熟系から完熟系までこれだけ、映画があります。(フリップを出す)

 誰がどうやって決めたのかはよく分かりませんけども、ちょうど『キャンパス·エロチカ 熟れて開く』が早熟と完熟の間にいるということでしょうか? さあ、このテーマが一番深いところは、1976年の製作で、「70年代」であったっていうことですよね。それは「青春とは何だ?」という疑問を投げかけてくるに違いないわけです。

■夕日に向かってこすれ『キャンパス·エロチカ 熟れて開く』

 70年代は「青春とは何だ」ということを何回も自分に言い聞かせて、答えがでなくて、イライラしてしまう。これが「青春」でございました。結論が出ない、さあ、このこの映画の中で、教えてくれている「青春」とは何でしょうか?

 中央に描いているのが、この映画に今一番メインですよね。水でブラウスが濡れて、ブラジャーが見える。たぶん、日活ロマンポルノでは、ここが「青春」です。

 「青春」といえば、この映画でも出てきますが、荒川線、これですよね。歌の中では、中央線がでてきましたので、この荒川線と中央線が当時の「青春」であるという事は間違いありません。そしてジーパンはパンタロン、そしてその下はですね、ジーン地のコッポリサンダル。ヒールのヤツでね。背が高く見えるっていうことなんですけども、人の家に上がれば、袴を引きずったようになるという。ギターのメーカーはねMORRISですよね。MORRIS持てばスーパースターも夢じゃないってCMまでありましたから。そうそう、カーセックスをしてる人も「青春」だけど、覗いてる人にも「青春」がある。そんな時代です。

 そして、『キャンパス·エロチカ 熟れて開く』に出てくる、夢のようなアパートですよね。隣の部屋が覗けるよう穴がある壁。日活ロマンポルノでは必ず、隣の部屋に女子大生が住んでいたものでした。

 そしてこの映画の最終的なテーマ、「青春」とはもう既に熟れているのに、男はちっとも彼女の気持ちがよめないこと。そういうことを言いたいんだと思いますね、この映画は。

 さぁ、今月の4本を紹介したいと思います。

キャンパス·エロチカ 熟れて開く』 1976年製作、北川たか子さん主演。

花芯の刺青 熟れた壷』 1976年製作、谷ナオミさんの主演作でございます。

高校教師 成熟』 1985年製作。西村昭五郎監督作、赤坂麗さん主演作でございます。

聖熟女』1988年製作。樹ますみ主演、広木隆一監督の作品でございます。この文字「聖」はセイントと、読む時代もありましたけど、この場合「せいじゅくじょ」と読むのが正しいそうです。

※各作品はamazon、FANZAをはじめする動画配信サービスにて配信中です

それではあなたもグレイト余生を!

出演・構成:みうらじゅん/プロデューサー:今井亮一/ディレクター:本多克幸/製作協力:みうらじゅん事務所・日活

衛星劇場では、サブカルの帝王みうらじゅんが、お勧めのロマンポルノ作品を紹介するオリジナル番組「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」を放送!

※人気コーナー「みうらじゅんのグレイト余性相談室」では、皆様から性のお悩みや、疑問を大募集

【日活ロマンポルノ】
日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。 日活ロマンポルノ公式ページはこちらから
 
 
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