【あの頃のロマンポルノ】日本映画批評「変態SEX 私とろける」

 日活ロマンポルノは生誕50年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記 事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポル ノ」。キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。(これまでの掲載記事は コチラから) 

 今回は、秋本 鉄次氏による「変態SEX 私とろける」の記事を、「キネマ旬報」1980年11月上旬号よ り転載いたします。 

 1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお 見逃しなく! 

日本映画批評「変態SEX 私とろける」 

 昨年、年頭の「聖処女縛り」を皮切りに、「少女縄化粧」に「密写!緊縛拷問」......と1年を通じて快 投乱麻だった渡辺護。それに比べると今季は今ひとつ冴えが見られないなァと、映画を見る観客は、プロ野球を見に来る観客にも似て、ごひいき投手の快投、熱投が見られないと、ヤジのひとつも飛ばした くなるもの。ちょうどパリーグで言えば、わが日ハム・ファイターズの昨年の20勝投手・高橋直樹が、 今年は、アメージング・ルーキー木田勇にアオられたのか、エースの座から落ちてボクは“一年置きの投手だから”と嘆いているのに対してのファン心理に似ている。

 脱線はさておき、このところ続けて見た、渡辺護3本。まず「(裸)青春地獄」は、荒井晴(彦)脚本、日野 繭子主演......とほぼベストオーダーにもかかわらず、ピンク映画の内輪受けのみ目だち、オハナシの方は その小世界にこだわってグルグルとカラ廻りの失敗作だった。往年の名作!!「秘湯の町・夜のひと で」の“あっしら、しがねェピンク映画でござんす”の如くに突き抜けない限り、安易に現場の人間を登場させるべきではないと思う。

 そこへ行くと「日本の痴漢」は、充分楽しめたが、それは今や出て来るだけで、観客にバカ受け(こち とらもギャハハハ!)の快優久保新二、独壇場の出血大サービス、ワンマンショーに寄るもので、これぞ渡辺護作品!ではなかった。 

 そして、この3本目。脚本・監督渡辺護ということで、これは久々の“ドラマ”の渡辺護の本領を期待出 来るかナと見参した。 

 自分を誘拐暴行し、工場経営者の優しかった父を自殺に追い込み、財産を奪った後妻と使い込み社員 (杉佳代子と国分二郎、例によって快調)への復讐を誓う娘。昨年、日野繭子の肉体を駆使、おんなの怨 念劇を全面展開させた渡辺護。やはりこういうストーリーが氏には似合いだし、こちとらの好みでもあるし。 

 重要なのは、もちろんヒロイン。この復讐のヒロインを演ずる新人・夏麗子。セーラー服姿は、せい ぜい榊原郁恵ってトコでダサいのだが、夜の蝶として変身、昔、自分を犯した男も仲間に引き込んで、 仇の二人にニコリともせず銃弾をブチ込む頃には、キツい化粧が妙に妖しく映え、ちょいと元東映の山 内えみこ(現・恵美子)っぼくてわるくない。 

 まだまだ、本領発揮とはいかないまでも、昨年の渡辺護のペースへ戻るキザシは充分に感じられた。 来季は期待出来る、なんて先のことを言える程、こっちもそっちも余裕はないはず。今年だってまだ2 ヵ月はある。まだまだ月1本ペースで、ピンクのマウンドに仁王立ちしてもらいたいベテラン・渡辺 護。 

 ヒロインは日野繭子クンでも、朝霧友香ちゃんでも、この夏麗子クンでもいい。私の行き付け、銀座 地球座か、中野ひかり座ででもぜひ、渡辺護の快投“ドラマ”にぜひ、この年内、出逢いたいものだ。お待ちしてます! 

文・秋本 鉄次
「キネマ旬報」1980年11月上旬号より転載

 

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