沢口靖子 サワグチヤスコ

  • 出身地:大阪府堺市
  • 生年月日:1965/06/11

略歴 / Brief history

大阪府堺市の生まれ。府立泉陽高校3年在学中の1984年1月、東宝主催の“第1回東宝シンデレラ”で3万1653人もの応募者の中からグランプリに選ばれる。同年、武田鉄矢主演の人気シリーズ「刑事物語3・潮騒の詩」のヒロイン・海子役で映画デビュー。同年、東宝の看板シリーズである橋本幸治監督「ゴジラ」にも出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。翌85年、NHK連続テレビ小説『澪つくし』のヒロインに抜擢。さまざまな逆境に立ち向かい、戦前から戦後の激動の時代を生き抜く古川かをる役を熱演し、錚々たるキャストに囲まれる中、健康的な美貌と初々しさで朝の顔として国民的な人気を得た。その勢いのままに、同年12月には大林宣彦監督「姉妹坂」も公開され、京都を舞台に血の繋がらない四姉妹の三女を演じた。その後も「鹿鳴館」86、「映画女優」「竹取物語」87と市川崑監督作品に相次いで起用されるが、主演作の「竹取物語」でさえも外見の美しさを重視した扱いに留まり、彼女の潜在能力を引き出せたとは言い難い仕上がりであった。一方テレビでは、沖縄生まれの正義感あふれる武闘派OLを好演したTBS『痛快!OL通り』86を機に、コメディエンヌとしての才能を開花させていく。SF作家・新井素子の自身の結婚が題材の小説を基にした日本テレビ『結婚物語』87と、その続篇にあたる『新婚物語』88では、数々の困難を乗り越え、作家と主婦業を両立させるべく奮闘するヒロインをキュートな眼鏡姿で溌剌と快演。88年のTBS『痛快!ロックンロール通り』では、ロックンローラーを夢見る音痴なバスガイドという個性的な役柄をチャーミングに演じるなど、『澪つくし』とは異なる現代的なヒロイン像を打ち出し、同世代の共感を得る。90年代に入ると、沢口の演じる役柄にも変化が訪れる。91年のフジテレビ『ホテルウーマン』では、不倫の末にシングルマザーとして子供を育てながら、仕事もバリバリとこなす貪欲なキャリアウーマンを好演して新境地を開く。その後も、野心家のファッションデザイナーを熱演した日本テレビ『嵐の中の愛のように』93、女性にまつわる事件に挑む新婚の検事に扮したテレビ朝日『女検事の事件ファイル』93など、自立した働く女性の役を次々とオファーされ、96年のフジテレビ『古畑任三郎』では、厳しい戒律の女子高の同僚を殺害する“笑わない女”をミステリアスに演じた。さらに、80年代後半にお茶の間を魅了した彼女の卓抜したコメディセンスなど忘れかけていた99年、金鳥『タンスにゴン』の新CMのイメージキャラクターに選ばれる。市川準の巧みな演出にも乗って、沢口は、ある時は巨乳を揺らす場末のシンガー、ある時は関西弁まるだしで悪態をつく雛人形など、毎回視聴者の予想を気持ちよく裏切る意外性のあるキャラクターを演じ続け、2005年までに27パターンも制作される人気シリーズとなった。このCMに触発されたという三谷幸喜は、自身の作・演出による舞台『Bad News☆Good Timing』01で、『古畑任三郎』とは180度異なる、天然ボケの新婦役に彼女を起用し、新たな魅力を引き出すことに成功した。竹中直人の型破りな秀吉と沢口扮する正室・おねとの、ユニークな組み合わせによる化学反応が生きたNHK大河ドラマ『秀吉』96などを経て、美人で頭脳明晰であるが少々風変わりという、沢口の持つ二面性にぴたりと合致した新たな代表作が、99年よりスタートしたテレビ朝日『科捜研の女』である。彼女が演じる榊マリコは、京都府警科学捜査研究所の法医学研究員としての見地から独特のアプローチを試み、不可解な事件を解明していく。頑固なまでに科学を信奉する一方、服装などには無頓着でバツイチという、主役でありながらも謎めいた存在で、2010年現在、第10シリーズまで制作される人気作となっている。そのほかの主なテレビドラマに、NHK『トーキョー国盗り物語』93、『赤ちゃんが来た』94、『お登勢』01、『盲導犬クイールの一生』03、『新選組!』04、『ひとがた流し』07、テレビ朝日『嫁の出る幕』94、『新・御宿かわせみ』97~98、『鉄道捜査官』00~11、『疑惑』09、TBS『竜馬がゆく』97、『海まで5分』98、『サラリーマン金太郎2』00、『塗られた本』07、フジテレビ『彼』97、『検事・霞夕子』11、日本テレビ『冬のひまわり』04など。映画は「ゴジラVSビオランテ」89、「どっちもどっち」90、「ヤマトタケル」94、「ひめゆりの塔」95などを経て、07年、野村恵一監督「小津の秋」で久々に主演。小津安二郎ゆかりの無藝荘でもロケを行なった本作で、亡き父親に関する重大な秘密を抱えたまま蓼科を取材に訪れる雑誌記者の葛藤を、感情表現を極力抑えながら丹念に演じた。舞台女優としても活躍し、95年の初演以来たびたび再演された『藏』で98年度の菊田一夫演劇賞を受賞したほか、『細雪』のようなオーソドックスな作品から先述の『Bad News☆Good Timing』01、井上ひさし作、いのうえひでのり演出のエネルギッシュな空間で二役を熱演した『天保十二年のシェイクスピア』02、向田邦子の原作を福島三郎が大胆に翻案した『びっくり箱・姉妹編』06、ミヤコ蝶々の知られざる一面を体現した『女ひとり・ミヤコ蝶々物語』08などの多様なジャンルの作品にも果敢にチャレンジし、演技の幅を広げている。長年のキャリアからすれば映画出演があまりにも少ないものの、舞台、テレビで研鑽を積んできた彼女ゆえ、その本領を発揮できる映画と出会える日も、そう遠くはないだろう。

沢口靖子の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 科捜研の女 劇場版

    制作年: 2021
    科学を武器に、様々な凶悪犯罪に立ち向かう法医研究員を沢口靖子が演じる1999年開始の連続TVシリーズ、初の劇場版。世界同時多発的な不審死事件が勃発するなか、現代最新科学では絶対に解けないトリックを操るシリーズ史上最強の敵がマリコの前に立ちはだかる。若村麻由美、風間トオル、斉藤暁、渡部秀、山本ひかる、石井一彰、西田健、金田明夫、内藤剛志といったTV版レギュラー陣が集結。監督はTVシリーズを手がけてきた兼﨑涼介。
  • 校庭に東風(こち)吹いて

    制作年: 2016
    柴垣文子の同名小説を原作に、様々な問題を抱えた児童たちと、彼らと向き合う小学校教師の交流を描いたドラマ。教師の三木知世は、新しく赴任した小学校で、家では話せるのに学校では話せなくなる“場面緘黙症”の疾患を抱えた少女・蔵田ミチルと出会う。出演は『科捜研の女』シリーズの沢口靖子、『花子とアン』の岩崎未来。監督は「青いうた のど自慢 青春編」の金田敬。2016年9月3日より京都・イオンシネマ高の原を皮切りに全国順次公開。
  • 小津の秋

    制作年: 2007
    名匠・小津安二郎が仕事場として使った別荘“無藝荘”を中心にして、深まりゆく秋の蓼科高原を舞台に、三人の男女の織りなす心の綾を丹念に描く。野村惠一監督の「二人日和」に続く作品。出演は「二人日和」の藤村志保、栗塚旭に沢口靖子が加わった。
  • 千と千尋の神隠し

    制作年: 2001
    神々の世界に迷い込んだ少女が、自分でも気づかなかった逞しい力を発揮して困難を乗り越えていこうとする姿を描いた長篇アニメーション。監督は「もののけ姫」の宮崎駿で、自身による原作を宮崎監督自らが脚色。映像演出として「ホーホケキョ となりの山田くん」の奥井敦があたっている。声の出演に「すずらん 少女萌の物語」の柊瑠美ら。尚、本作は「もののけ姫」の日本の歴代興行記録を抜いて第1位の成績をおさめた。キネマ旬報2001度日本映画ベスト・テン第3位作品。一部の劇場ではDLP上映された。
  • ひめゆりの塔(1995)

    制作年: 1995
    第二次大戦中、可憐にして逞しく生きたひめゆり部隊の少女たちの、悲しい青春を描いたドラマ。今回が4度目の映画化となる。監督は「さくら」の神山征二郎。主演は「ヤマトタケル」の沢口靖子。戦後50周年記念作品。青少年映画審議会推薦。1995年5月15日より沖縄・那覇グランドオリオンにて先行上映。
  • ヤマトタケル

    制作年: 1994
    不思議なパワーを持つ王子ヤマトタケルが3つの光を手に入れながら邪悪な神の化身と戦う姿を描く、『古事記』に題材を得たSFアドベンチャー。監督は大河原孝夫、脚本は三村渉、特技監督は川北紘一と、「ゴジラVSキングギドラ」などの″ゴジラ″スタッフが手がけた。RPG映画と謳い、TVアニメ、ファミコンなどとのマルチメディア展開も話題となった。
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