緒方明 オガタアキラ

  • 出身地:佐賀県
  • 生年月日:1958/11/23

略歴 / Brief history

【文学性と社会性の香り漂う本道の純映画作家】佐賀県生まれ。就学児童期は長崎で過ごし、高校時代から8ミリ映画を撮り始める。福岡大学在学中に石井聰亙監督と出会い映画監督を志して上京、「狂い咲きサンダーロード」(80)、「爆烈都市/Burst City」(82)など石井作品の助監督をつとめた。この間の1980年、自主製作で8ミリ作品「東京白菜関K者」を監督し、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)81に入選を果たす。その後、高橋伴明、大森一樹ほかの助監督もつとめ、86年に独立、CMや企業PRの分野でフリー・ディレクターとして活動を始めた。それらの作品が認められ89年にテレビ・ドキュメンタリーに進出。90年代は『ETV特集』や『驚きももの木20世紀』といったテレビ番組を中心に活躍し、ドラマ、ミュージックビデオを併せると演出作品は100本超になるという。2000年、WOWOWが企画製作する『J・MOVIE・WARS』の一本として「独立少年合唱団」を劇場映画初監督。これがベルリン映画祭のアルフレートバウアー賞(新人監督賞)を日本人で初めて受賞、日本公開後には監督協会新人賞はじめ国内の新人監督賞を総なめという高評価を得る。また05年の「いつか読書する日」はモントリオール世界映画祭審査員特別賞を受賞、前作と連続してキネマ旬報ベスト・テンにも入選を果たし、大型新進監督の地位を確たるものとした。その後、企画ものの中・短編を経た09年には「のんちゃんのり弁」を監督、さらにヌーヴェルヴァーグの名作「死刑台のエレベーター」の正式リメイク版(10年秋公開)を手がける。【静謐な文体のリアリズムと詩情】自主映画コンテスト・PFFの初期入選者であり、同年の入選者に黒沢清、松岡錠司、手塚真などがいる。ただし当時のPFFはグランプリを出すコンペ形式ではなく、入選が即映画監督の道に繋がるわけでもなかった。緒方も自主映画の先達・石井聰亙の知遇を得て助監督修業に入り、約10年間のテレビ演出ののち満を持しての映画進出という、現場叩き上げの監督に数えられよう。撮影所システム崩壊後の現場に学んだ監督らしく、スタジオよりはロケーション撮影を重視し、「独立少年合唱団」の北国の山間、「いつか読書する日」の長崎の坂の街、「のんちゃんのり弁」の東京下町といった情景を生かす作品づくりに腕をふるう。93年からコンビを組む(当時は放送作家であった)青木研次がオリジナル脚本を担当した前期2作品は殊に文芸性が高く、リアリズムと詩情があいまった静謐な文体が高く評価されている。また「独立少年合唱団」では全共闘活動家を、「いつか読書する日」では児童福祉や認知症を、と社会世相も積極的に物語へ取り込む傾向が見られた。原作ものを扱った「のんちゃんのり弁」では一転して軽喜劇を扱い、物語の重さよりも人間描写の面白さを印象に残す映画作りに挑んでいる。

緒方明の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • シン・ゴジラ

    制作年: 2016
    「ゴジラ FINAL WARS」以来12年ぶりに日本で製作された「ゴジラ」シリーズ第29作目。「エヴァンゲリオン」シリーズの庵野秀明と「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の樋口真嗣が短編「巨神兵東京に現わる」に次いで、再びタッグを組んだ。現代日本にゴジラが出現。初めて直面する恐怖に、街中パニックに陥る……。自衛隊の全面協力のリアルな戦闘シーン、シリーズ最大の体長118.5メートルのゴジラがフルCGで造型され、リアリティを追求したストーリーとドキュメンタリータッチの演出で描き出す。長谷川博己、竹野内豊、石原さとみら総勢328名の日本俳優陣が結集。2016年第90回キネマ旬報ベスト・テン2位、日本映画脚本賞(庵野秀明)。2023年10月27日モノクロ化した「シン・ゴジラ:オルソ」が第4回「『ゴジラ‐1.0』公開記念 山崎貴セレクション ゴジラ上映会」にて上映。
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  • バット・オンリー・ラヴ

    制作年: 2015
    1980~90年代にピンク映画で活躍し、“ピンク四天王”の1人に数えられた佐野和宏が、18年ぶりに脚本・主演兼任で手掛けた監督作。咽頭がんで声帯を失った佐野自身の経験を投影した主人公が、娘が自分の子でないことを知り、苦悩する。映画評論家として活躍する寺脇研が、「戦争と一人の女」に続いてプロデューサーを務めた。
  • 友だちと歩こう

    制作年: 2013
    ナイーブな少年たちを描き第50回ベルリン国際映画祭アルフレート・バウアー賞を受賞した「独立少年合唱団」や、かつて交際していた中年男女を描き2005年モントリオール世界映画祭審査員特別賞を受賞した「いつか読書する日」を生みだした緒方明監督と脚本家の青木研次が、9年ぶりにタッグを組んだオムニバス映画。郊外の団地に住む年老いた男性たちや青春を引きずる者たちが織りなす「煙草を買いに行く」「毛糸の犬」「千九百年代のリンゴ」「道を歩けば」の4作から成り、それぞれ密接に関わり合っている。アコーディオン奏者cobaが音楽を担当。「JAZZ爺MEN」の上田耕一、「風花」の高橋長英、「恋に至る病」の斉藤陽一郎、「SP」シリーズの松尾諭らが出演。
  • +1(プラスワン)Vol.4 「石にも風にもなれない」

    制作年: 2013
    俳優たちが映画監督とともに演技を磨く4日間のワークショップから生まれた短編映画。キャンプに向かう途中、恋人とケンカした女性の夏休みの顛末を描く。監督は「のんちゃんのり弁」の緒方明。出演は「グミ・チョコレート・パイン」の斉藤彩、「SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー 傷だらけのライム」の増田久美子。
  • 死刑台のエレベーター(2010)

    制作年: 2010
    1957年にルイ・マルが発表したフィルム・ノワールの傑作を、舞台を日本に置き換えてリメイク。不倫関係にある男女が、女の夫の殺害計画を立てるが、手違いから計画が破綻してゆく。出演は「のだめカンタービレ 最終楽章」二部作の吉瀬美智子、「ジェネラル・ルージュの凱旋」の阿部寛。監督は「いつか読書する日」の緒方明。
  • のんちゃんのり弁

    制作年: 2009
    「Sweet Rain 死神の精度」の小西真奈美主演で贈るハートフルドラマ。東京の下町を舞台に、子連れ離婚した30代の主婦が、お弁当屋開業を目指して奮闘する姿を描く。監督は、「いつか読書する日」の緒方明。「かもめ食堂」のフードスタイリスト飯島奈美が手掛けた料理の数々も見どころ。原作は入江善和の人気コミック。
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