松雪泰子 マツユキヤスコ

  • 出身地:佐賀県鳥栖市
  • 生年月日:1972/11/28

略歴 / Brief history

佐賀県鳥栖市の生まれ。県立鳥栖商業高校在学中の1989年、雑誌『メンズノンノ』の“第1回メンズノンノ・ガールフレンド”オーディションでグランプリを受賞し、同誌の専属モデルをつとめる。高校卒業を機に上京して本格的に芸能活動を開始。91年のTBS『熱血!新入社員宣言』で女優デビューを果たす。同年のフジテレビの深夜ドラマ『バナナチップス・ラブ』、NHK『夜に海輝き』で相次いで主演も飾り、フジテレビ『アルファベット2/3』『ジュニア・愛の関係』92などを経て、当時としては珍しい企画だった、スペシャルドラマと劇場映画が連動したフジテレビの三部作『パ★テ★オ』92にメインキャラクターのひとり、水島五月役で出演する。同作の完結篇となる劇場版で映画初出演。この頃から若手実力派として頭角を現し、93年のフジテレビ『白鳥麗子でございます!』で演じた高飛車な性格のお嬢様・白鳥麗子役で、一躍スターダムの座に駆け登った。その美貌とプライドの高さゆえ好きな男の前では素直になれず、思い込みと勘違いの激しさから騒動を巻き起こす主人公をコミカルに熱演し、好評から同年に続編、95年には映画版も作られる人気作となった。ここで確立されたハイテンションなコメディ芝居が重宝され、以降も、TBS『毎度ゴメンなさぁい』94、『毎度おジャマしまぁす』95、『硝子のかけらたち』96、『理想の上司』97、日本テレビ『男はいらない』94、『ベストフレンド』95、フジテレビ『勝利の女神』96、テレビ朝日『名探偵保健室のオバさん』97などの連続ドラマに次々とレギュラー出演。コメディエンヌとしてのポジションにやや傾きかけもしたが、シリアスドラマも含めて多彩な役どころをしっかりこなしていった。その初期の集大成となったのが、98年のフジテレビ『きらきらひかる』で演じた勝ち気な女刑事・月山紀子役で、男社会の警察組織の中でテンション高くパワフルに生き抜いていく強い女性像を、独特のユーモアを交えてアクティブに演じ抜いた。この年は、若い夫婦が直面するさまざまな困難を描いた日本テレビ『愛、ときどき嘘』、弱さを隠して生きるキャリアウーマンを演じたTBS『なにさまっ!』もあり、それぞれまったく性格が異なる役どころを演じ分けた松雪にとって飛躍の年となった。同年3月、ロックバンド“ザ・スリル”のギタリスト・GAKUと結婚。その後もフジテレビ『アフリカの夜』99、『太陽は沈まない』00、『救命病棟24時』01、『ビギナー』03、TBS『真夜中の雨』02、『砂の器』04などに準主演し、同世代の女性から大きな支持を集める好感度の高い女優として30代を迎える。その間の2001年に長男を出産したが、GAKUとは04年12月に離婚。一方、映画は飯田譲治監督「アナザヘヴン」00のあと、SABU監督の「MONDAY」00、「DRIVE」02に連続出演したが、その後はドラマも含めて、ゆったりとしたペースで作品を厳選したような歩みが続いた。変化が訪れたのは06年で、眼と耳が不自由なキタキツネを育てる少年の母親役を演じた河野圭太監督「子ぎつねヘレン」を経て、李相日監督「フラガール」に、寂れた町を活性化させるために結成されたフラダンサー・チームの指導を任された元SKDのダンサー・平山まどか役で主演する。キネマ旬報ベスト・ワンをはじめ絶賛を集めた同作で、松雪自身も日刊スポーツ映画大賞主演女優賞、日本アカデミー賞優秀主演女優賞、ゴールデンアロー賞映画賞を受賞。ひたむきなフラダンサーたちの情熱に、自らも生きる意欲を取り戻していく元ダンサー役で、さまざまに思い悩む30代女性の等身大が投影されたリアルな芝居を見せた。ここからはハイペースな仕事ぶりが続き、若松節朗監督「子宮の記憶・ここにあなたがいる」07、「沈まぬ太陽」09、李斗士男監督「デトロイト・メタル・シティ」08、「てぃだかんかん・海とサンゴと小さな奇跡」10、西谷弘監督「容疑者Xの献身」08、生野慈朗監督「余命」09、角川春樹監督「笑う警官」09、吉田大八監督「クヒオ大佐」09で、次々とヒロイン格などの重要な役どころを演じる。08年には「デトロイト・メタル・シティ」と「容疑者Xの献身」のそれぞれで日本アカデミー賞の優秀助演女優賞をW受賞した。テレビドラマも、07年のフジテレビ『ファースト・キス』で3年ぶりに連ドラに復帰。同局の単発ドラマ『法の庭』07の主演を経て、12年ぶりの連ドラ単独主演作となった日本テレビ『Mother』10では、母親から虐待を受ける教え子の少女を助けるために突発的に誘拐してしまう元小学校教師の主人公・鈴原奈緒を好演して、視聴者の涙を誘った。10年は、テレビの報道局を舞台にしたフジテレビ『パーフェクト・リポート』、聾唖の母親役で家族愛を謳ったNHKの単発ドラマ『心の糸』にも続けて主演し、久々にドラマでも存在を強烈にアピールする一年とした。舞台も、長塚圭史脚本、三池崇史演出の『夜叉ヶ池』04以降、いのうえひでのり演出『吉原御免状』05、『五右衛門ロック』08、松尾スズキ演出『キャバレー』07、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出『東京月光魔曲』09とコンスタントに出演している。映画の近作は、11年10月公開予定の石井克人監督「スマグラー」。初期のコメディエンヌぶりから、行動的な強い女性像で広くアピールした20代、リアルな女性の悩みや葛藤を具現化した30代を経て、間もなく迎える40代での動向が気になる。

松雪泰子の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • ゲキ×シネ「神州無頼街」

    制作年: 2023
    劇団☆新感線が上演した舞台を映画館で上映する「ゲキ×シネ」の一本。幕末の駿河国で、清水湊の侠客、清水次郎長の快気祝いに集まった博徒の親分集たち。そこに謎の一家が乱入して巻き起こる、歌あり、踊りあり、立ち回りありの幕末伝奇時代劇。主人公で博識の若き町医者、秋津永流<あきつながる>に福士蒼汰、陽気でお調子者の口出し屋、草臥<そうが>に宮野真守が扮し、助け合いながらも時に足を引っ張り合うバディを演じる。富士の裾野に“無頼の宿(ぶらいのしゅく)”を開く、ワイルドかつ謎に満ちた侠客・“身堂蛇蝎<みどうだかつ>一家”を、松雪泰子、高嶋政宏、木村了、清水葉月の4人が強烈な個性で演じた他、粟根まことなどお馴染みの劇団員たちも勢揃い。2022年、作・中島かずき、演出・いのうえひでのり。
  • 甘いお酒でうがい

    制作年: 2019
    シソンヌのじろうが長年演じてきたキャラクター・川嶋佳子の日記という設定で書かれた同名小説を映画化。40代独身の川嶋佳子は毎日日記をつけている。何気ない日常を綴る佳子に、小さな変化が訪れる。それは、ふた周り年下の岡本くんとの恋の始まりだった。出演は、「at Home アットホーム」の松雪泰子、「ビブリア古書堂の事件手帖」の黒木華、「ホットギミック ガールミーツボーイ」の清水尋也。監督は、「美人が婚活してみたら」の大九明子。
    90
  • ゲキ×シネ「髑髏城の七人 Season鳥」

    制作年: 2019
    劇団☆新感線の人気公演を映画館で上映する“ゲキ×シネ”。代表作『髑髏城の七人』の各シーズンを連続上映する第2弾に、阿部サダヲ、森山未來が出演した「Season鳥」が登場。戦国時代。因縁で結ばれた捨之介、関東髑髏党党首・天魔王らが激突する。共演は「泣き虫しょったんの奇跡」の早乙女太一、「鋼の錬金術師」の松雪泰子。
  • 鋼の錬金術師

    制作年: 2017
    同名の人気コミックを「ピンポン」の曽利文彦監督、「映画 暗殺教室」の山田涼介主演で実写化。幼くして錬金術に長けたエドは弟アルと共に、亡き母を生き返らせる人体錬成を試みる。だが錬成は失敗し、代価としてエドは身体の一部を、アルは身体全部を失う。出演は、「少女」の本田翼、「結婚」のディーン・フジオカ、「古都」の松雪泰子、「アイアムアヒーロー」の大泉洋、「日本のいちばん長い日」の蓮佛美沙子、「闇金ウシジマくん Part3」の本郷奏多。
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  • 橋ものがたり「小さな橋で」

    制作年: 2017
    藤沢周平の短篇集『橋ものがたり』の一篇を「最後の忠臣蔵」の杉田成道監督が映像化。10歳になる広次は母・おまき、姉・おりょうと3人暮らし。飲み屋で懸命に働きながらも自分の元を去った父・民蔵に恨み言をこぼす母を、広次は複雑な思いでみつめていた……。出演は「古都(2016)」の松雪泰子、「天空の蜂」の江口洋介、「クロユリ団地」の田中奏生、「クリーピー 偽りの隣人」の藤野涼子、「THE NEXT GENERATION パトレイバー」シリーズの筧利夫、「散歩する侵略者」の笹野高史、「めがみさま」の松井玲奈、「おかえり、はやぶさ」の中村梅雀。脚本は「海辺のリア」の小林政広。
  • 古都(2016)

    制作年: 2016
    川端康成の同名長編小説を、舞台を現代に置き換え映画化。松雪泰子が双子の二役を演じている。京都で代々続く呉服店を営む千重子と、北山杉の里で働く苗子。生き別れた双子の姉妹とその娘たちは、時代が大きく移ろう中、受け継いできた伝統の継承に葛藤する。京都とフランス・パリで撮影が行われた。監督はハリウッドで映画を学び「Re:Play-Girls」などを手がけたYuki Saito。岐路に立つ娘たちを「寄生獣」シリーズの橋本愛と「無伴奏」の成海璃子が演じる。2016年11月26日より京都先行公開。
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