インフィニティ・プールの映画専門家レビュー一覧

インフィニティ・プール

「ポゼッサー」のブランドン・クローネンバーグが監督したスリラー。高級リゾート地である孤島を妻エムと訪れた作家ジェームズ。ある日、彼の小説のファンだという女性ガビとその夫と、観光客は行かないようにと警告されていた敷地外へとドライブに出かける。出演は、「ターザン REBORN」のアレクサンダー・スカルスガルド、「Pearl パール」のミア・ゴス。
  • 映画監督

    清原惟

    追い詰められた人間の内的世界を覘くような恐さのある作品だった。金持ちが途上国のリゾート地に行って罪を犯しても、お金を積めば自らのクローンに罪を負わせ放免されるという設定は、今の社会を考えると妙なリアリティがあるように思えた。ほとんど語らない主人公の魂が抜け落ちてる感じや、後半のあまりにもグロテスクになっていく展開のやりすぎ感は少々気になったが、クローズアップの際立つ撮影やカット割りによって、土地に流れる時間や、心理描写などが印象深く見えた。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    ちょっと意地の悪い評言だが、ブランドン・クローネンバーグの映画は異形なる巨人として屹立するフィルムメイカーの父親をいかにアモラルな地平で超克するかという“あがき”のようにも映ずる。異郷のリゾートを舞台に悪無限的に反復される殺戮のセレモニーは、これぞ果敢なるモラルへの侵犯行為と言わんばかりの露骨さだが、島民のF・ベーコン風に歪められた顔貌のイメージと相まって既視感が付き纏う。とはいえ「裸のジャングル」を転倒させたようなモチーフが奇妙な後味を残すのは確かだ。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    ブランドン・クローネンバーグの新作は、アレクサンダー・スカルスガルド(『メディア王』)とミア・ゴス(「Pearl/パール」)を起用して映画的なバネの強さが増している。一見魅惑的な表皮の下に歪で不健全な魂を隠し持つこの2人が体現するのはたがが外れた本能と欲望の極北。不快だが、あまりにも常軌を逸していくので、ひきつった笑いが沸き起こってくる。これは冷血で獰猛な現代の階級風刺。ブランドンに父デイヴィッドの透徹したロマンティシズムは感じないが、独自の生命を宿らせていると思う。

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