No.10の映画専門家レビュー一覧

No.10

「ボーグマン」で2013年シッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリに輝いたアレックス・ファン・ヴァーメルダム監督によるサスペンス。幼少期に記憶を失い里親に育てられた舞台俳優ギュンター。惨い仕打ちをした仲間に復讐を誓う彼に、ある事実が待ち受ける。本作はヴァーメルダム監督にとって10本目の長編作品。
  • 映画監督

    清原惟

    始めと終わりで全く別の映画のように、悪夢のようにさまざまなジャンルを横断していく。とある舞台の座組みの中で起きているドロドロした人間関係の話だと思って観ていると、途中からサスペンスのような雰囲気になり、と思えば最後は異星人SFものになっていた。しかし、すべてに冗談めいた空気があるからか、ジャンルの移り変わりをすんなり受け入れて観られたのが奇妙だった。スケールの大きな話なのにも拘らず、登場人物が最初からあまり変わらず、どこかスモールワールド的な雰囲気も。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    主人公の舞台俳優と共演者の女優の不倫が発覚し、嫉妬に駆られた演出家である夫が権力を笠に理不尽な報復に出る。前半は至極ありふれた三角関係の行方をサスペンスたっぷりに魅せるが、にもかかわらず、〈監視者〉を介在させつつ意味ありげ、かつ思わせぶりな不条理劇風の演出を施している狙いは奈辺にありや。などと訝しんでいるうちに不意打ちのように訪れる奇想に満ちた展開に?然となる。その壮大なる野心をあっぱれと称賛するか虚仮威しと断ずるかで評価が割れようが、私は後者。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    オランダの変わり種ヴァーメルダムに日本公開された作品は少ないが、71歳のベテラン。「ボーグマン」もかなり風変わりな映画だったが、この新作もそう。幼少期の記憶を持たない役者の物語。田舎劇団に所属し、監督の妻と不倫しているが、悪い人間ではない。アート映画風に淡々と進行、オフビートな喜劇のようだが、面白くなりそうな気配はない。しかし時折、彼を監視するビデオカメラの視点が挿入され……プレスにネタバレ禁止が記されていたが、実際知らない方がよい。監督は観客を信用しているのだ。

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