ダム・マネー ウォール街を狙え!の映画専門家レビュー一覧

ダム・マネー ウォール街を狙え!

コロナ禍に米金融市場で起こった実話を「ソーシャル・ネットワーク」の原作者ベン・メズリックのノンフィクションに基づき映画化。2020年、ある会社員の動画がきっかけで、個人投資家たちが倒産間近と見なされていたゲームストップ社の株を買い始め……。監督は、「クルエラ」のクレイグ・ギレスピー。出演は、「フェイブルマンズ」のポール・ダノ、「トランスフォーマー ビースト覚醒」のピート・デヴィッドソン、「消えない罪」のヴィンセント・ドノフリオ。
  • 映画監督

    清原惟

    実際にあった株取引に関する事件を基にした作品。個人の物語としてだけではなく、社会そのものを描こうとしている姿勢に胸が熱くなる。コロナ禍での事件ということもあり、当時の雰囲気を色濃く捉えていて、自分自身の感じていた感覚も思い出してしまった。たくさんの名もなき個人投資家たちを、映像で実際に見せていく手法も印象的だったし、何人かの投資家たちのそれぞれのエピソードにも、短いながら引き込まれる。もちろん、数々の名演をしてきたポール・ダノ演じる主人公も最高。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    コロナの最中に起きた実話の映画化。一人の会社員のドン・キホーテ的な旗振りでSNSに集結した数多の小投資家が倒産寸前のゲーム会社の株を買いまくり、ウォール街を牛耳る悪辣な大手ヘッジファンドに一泡吹かせる痛快篇だ。テーマはイマ風だが、マス・ヒステリアの恐怖もたっぷりと盛り込まれ、往年のフランク・キャプラが撮っても全くおかしくない。絶えざる幻滅と貧困に喘ぐ大衆にとっての敗者復活戦はSNS上の狂騒的なマネー・ゲームにしかない。そんな諦念も感じられる。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    2020〜21年。ヘッジファンドの空売り勢に一泡吹かせた小口個人投資家たちの反撃騒動の映画化。2009年の金融危機に大学を卒業した主人公の呼びかけに賭けたその他大勢の労働者のマスク姿。彼らとは対照的にマスクしない既得権益層たちへの階級闘争が閉塞感を打破する。映画らしい視覚的な感慨もあった。ステイホーム下の心細げな光景の数々が、将来に不安を抱える人々の心象風景になっていたからだ。好感触の役者陣と理性的な演出に貫かれたエンタテインメント。

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