アンブッシュの映画専門家レビュー一覧
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翻訳者、映画批評
篠儀直子
主人公を特定しない複眼的な語りだからわかりやすくはないが、撮影と編集がハイレベルで見ごたえ大。仏人監督を筆頭とするスタッフは多国籍、キャストは全員UAEの俳優。個人的には「中東で最も豊かで文化が欧米に近い国」ぐらいのイメージしかなかったUAEが、人の顔を持つ国として一気に身近に感じられ、〈映画〉は本質的にコスモポリタンなものだとあらためて感じ入ったのだが、それとは無関係に現実の紛争はなお続いているやりきれなさを、ラストシーンは伝えているようでもある。
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編集者/東北芸術工科大学教授
菅付雅信
2018年のイエメン内戦時の実話を基にしたミリタリー・アクション。治安維持のため派遣されたUAE(アラブ首長国連邦)軍がパトロール中に渓谷でゲリラに待ち伏せされる。先発隊が急襲され、彼らを救おうと向かった後発隊も待ち伏せされ、泥沼の戦いに。「96時間」で知られる仏監督ピエール・モレルの技術が活きる大迫力の戦闘シーンが白眉。しかし製作がUAEの会社で、死亡した兵士の「威厳ある移送」シーンがUAEのプロパガンダになっていることに興醒め。
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俳優、映画監督、プロデューサー
杉野希妃
UAE映画を見るのはおそらく初めてだが、よくあるハリウッドの戦争映画の様相を最初から最後まで貫いていた。アメリカ人が他民族に入れ替わっただけで何の特徴も見出せず。主演が誰であるのか曖昧な上に人物の掘り下げも浅いので、誰にも感情移入できない。ひっきりなしに続く戦闘シーンも似たような状況の繰り返し。戦死した兵士が英雄として讃えられる演出、感動を促す音楽など、戦争賛美にしか思えず、嫌悪感と虚しさが増すばかり。この類のプロパガンダ映画には辟易してしまう。
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