夜明けのすべての映画専門家レビュー一覧
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文筆家
和泉萌香
PMSの言葉を知ってどこかほっとした人、薬で改善した人もいれば一向に良くならない人もいて。それでも向き合っていかなければならないと思い悩む女性はたくさんいるし、私もそのひとり。自分の症状により現職を辞めざるを得なかったある2人が勤めることになった同じ職場。彼らが紡ぎ出すシンプルで小さな答えは、これから最も尊ぶべきことの一つだろう。その答えの実践者である、脇を固める人々の温かさもわざとらしさがなく、都会の灯りと手作りの星空に重なる。
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フランス文学者
谷昌親
PMS(月経症候群)に苦しむ女とパニック障害を抱えるようになった男の物語、などと書くと、障害者への偏見をなくすように促す作品だとか、社会のなかに居場所のない男女の恋愛模様を想像してしまうかもしれない。しかし、2人は職場の同僚にすぎず、むしろ違う方向を見ている。それでも互いの障害を理解し、助け合うようになる過程が、淡々と静かに描かれる映画なのである。原作はあるが、映画で付け加えられた要素によって、「夜」がより印象的なものになっている点も魅力的だ。
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映画評論家
吉田広明
弱者同士の連帯という主題の作品が多くなってきているのは、それだけ社会が疲弊しているということなのか、我々の視点が細密化して、これまで見ようとされなかった差異が可視化されてきたということなのか、ともあれ本作もその流れの中にあって、しかしこの種の主題にありがちな殊更な劇化の道を取ることなく、静かに日常を生き延びてゆく同志たちの姿をほのかなユーモアを交えながら淡々と捉えており、映画の姿が上品である。過去から届く光と声が現在を息づかせる辺りにも感動する。
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