トンソン荘事件の記録の映画専門家レビュー一覧

トンソン荘事件の記録

殺人事件の一部始終が収められたビデオに映った“あるもの”を追う取材班の調査過程をフェイクドキュメンタリー手法で映し出すサスペンス・ホラー。1992年、釜山の旅館「トンソン荘」のアルバイトの男が恋人を連れ込み殺害、その様子はカメラで撮影されていた。出演はNetflix『モラルセンス~君はご主人様~』のソ・ヒョヌ。監督は「あいつだ」のユン・ジュンヒョン。
  • 映画監督

    清原惟

    ジャンルとしてはフェイクドキュメンタリーなのだけれど、映像や芝居の質感からはじめ劇映画だと思ってしまった。しかし、ふいに監視カメラや、ペットカメラなどの定点映像が挟み込まれたときにその領域が溶けていく。次々と不可思議なことが起きるその現場に、カメラを持ち潜入するが、その彼らを撮っているカメラがあり、過去のビデオの視点はまるでこちらを見ているよう。現実がどこなのか迷子になるくらい複数の映像のレイヤーが敷かれ、その間をイメージが媒介していくようだった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    昔、映画批評においても疑似ドキュメンタリー・タッチの功罪が俎上に載せられたことがあるが、この映画は既存のフェイクドキュメンタリーの手法を駆使したホラーの欠点が露わにされている印象が否めない。おどろおどろしいナレーション、呪いのビデオテープ、そして謎めいた祈?師の出現と加害者に憑依し狂っていくヒロイン。手持ちカメラのぶれた映像と主観ショットの濫用etc。いずれも迫真的なリアリティを出そうとして、かえって喪失させてしまっているように思えてならないのである。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    この星取りレビューでは依頼された作品を見るので、ほぼ予備知識なく向き合うのだが、これは殺人現場もの、呪われた事件の調査・考察もののフェイクドキュメンタリーであった。余程のアイデアでもない限り、この手はしばらくもういいのではないかと感じているが、しかし、パターンの中の違いを楽しむジャンル映画なので、門外漢にとやかく言われる筋合いはないともいえる。映像は洗練されているが、その分だけ“フェイク”としてはありきたりなのであって、何よりそれほど怖くはないのである。

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