シアター・キャンプの映画専門家レビュー一覧

シアター・キャンプ

存続を賭けた舞台に挑む演劇スクールをモキュメンタリー形式で描き、2023年サンダンス映画祭USドラマ部門アンサンブル賞を受賞したコメディ。演劇スクール、アディロンド・アクトの校長が昏睡状態に陥り、息子トロイが継ぐが、スクールは経営破綻寸前で……。ニック・リーバーマン監督による2020年の短編「Theater Camp」(原題)を、ニック・リーバーマン監督と「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」の俳優モリー・ゴードンが組み長編化。モリー・ゴードンや「ディア・エヴァン・ハンセン」のミュージカル版・映画版で主演したベン・プラットら俳優陣が個性豊かなキャラクターを演じる。
  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    モキュメンタリー形式を採用した結果、物語世界が終盤まで完全に断片化されてしまっているのが非常にもどかしいのだが、クライマックスの子どもミュージカルの素晴らしさで全部帳消しになるという、ある意味「ずるい」構成。何といってもノア・ガルヴィンの歌と踊りが見られるのがありがたすぎる。彼はベン・プラットらとともにこの映画の製作の核。映画版「ディア・エヴァン・ハンセン」の主演だったベンが、パートナーであり、自身と同じく舞台でエヴァン役だったノアに、今回は花を持たせたという恰好。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    NY郊外の子どもたちの演劇サマーキャンプを舞台にしたドタバタ・コメディは、子役から大人の俳優まで実に芸達者揃いで米ショウビズの底力を感じる。中でも主演で歌も披露し監督も務めるモリー・ゴードンの才能が煌めく。子どもたちによる新作ミュージカルの上演で感動的なクライマックスを迎えるのだが、登場人物が抱えるすべての問題がこの上演一発で解決するのは、あまりにもアメリカ的能天気さではと。舞台ならいざしらず、映画にはもっとリアリズムが必要だろう。

  • 俳優、映画監督、プロデューサー

    杉野希妃

    登場人物の地が透けて見えるモキュメンタリーが大好物なのだが、また一つお気に入りが増えた。ミュージカルの上映に向けてひたむきに練習する子どもたちを前に、思惑まみれの大人たちが現実と向き合い、もがく姿がまぶしい。作り手のミュージカルを愛する純粋な思いもキャスト同士の信頼関係も深く伝わってきた。ただそこにあるものを信じるというシンプルな行為の尊さよ。なんでもかんでもデジタルで効率化を求められるこの時代に、泥臭くて手触り感のある本作は一際輝いている。

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