ホーリー・トイレットの映画専門家レビュー一覧

ホーリー・トイレット

仮設トイレ内だけで全編が進行し、孤立無援の恐怖と焦燥感を描くスリラー。頭部を負傷して意識を失った建築家フランクは、建設現場で横倒しになった仮設トイレの中で目を覚ます。トイレの周りに大量のダイナマイトが仕掛けられ、34分後に爆破されることに。監督・脚本は、新鋭ルーカス・リンカー。HARD:LINE Film Festival2022観客賞、fantaspoa2022特別賞受賞のほか、世界のファンタスティック映画祭で上映。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    ほとんどが簡易トイレ内部という非常に限定された空間で展開される物語は単調で、集中力を保ちながら見続けるのは困難。爆発が間近に迫っている状況下でもほとんど焦ることなく可能な脱出策を淡々と探り続ける主人公の姿勢が、かえってサスペンス性を削ぐ結果を生んでいる。デジタルな機器や建築家という設定を生かしつつなんとか目先を変えようとする意図は端々に感じられるものの、必要以上にB級的な過剰さを強調するような人糞や血をめぐる演出も空回りしているとしか思えず。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    気づいたら仮設トイレのなかで倒れており、しかも手のひらが鉄筋に貫かれて抜け出せない男という、ほとんど不条理なワンシチュエーションものの映画だが、それにしても状況を男にも観客にもわからしていく手筈の工夫のなさがとても気になる。フラッシュバックを多用し、都合よく過去の出来事を見せたり、空想で他の登場人物と絡ませてしまうのならば、あえて限定した空間を設定した意味はどこにあるのか。痛々しかったり下品な描写もあまりうまくいっていないようだ。

  • 文筆業

    八幡橙

    いかにも新鋭監督らしい、ワンアイデアの力業光る野心作。実際、中盤あたりまでは、狭い簡易トイレ内で次々試みられるスマホや伸縮型定規、鏡、腐ったサンドイッチ、壁の穴から覗き見えるウサギ等々、あらゆるものを駆使した苦し紛れの脱出作戦のあれこれが面白く、惹きつけられる。が、問題はいよいよ終局という段になってから。あまりにくどい悪手の畳み掛けに、そこまで膨らんできた思いが一気に消沈。定石を裏切りたいという意欲はわかるものの、何事も中庸が肝心、か!?

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事