エスター ファースト・キルの映画専門家レビュー一覧

エスター ファースト・キル

2009年の公開以降、カルト的な人気を誇るホラー「エスター」の前日譚で、恐るべきサイコパス少女、エスターの誕生秘話を描く。6歳の少女エスターの失踪事件から4年。いまだ心の傷が癒えない両親の下に、エスターが保護されたという知らせが届くが……。出演は「エスター」のイザベル・ファーマン、「ジェイソン・ボーン」のジュリア・スタイルズ。
  • 映画評論家

    上島春彦

    あの娘がどうやってエスターになったか、というお話。ある病気を思いっきり悪意をもって描いており物議を醸すかも。今更それはないか。ともあれ昨今ここまで台詞で「フリーク!」を連発する映画は珍しい。香港映画「殺人鬼」も似た設定を使っていたが、彼女が潜入する一家が実にワケありで、これの方が巧妙だ。名作「テオレマ」とは似て非なるコンセプトとはいえ、作者の意識にはかすっただろう。ジミー・デュランテ歌う〈グローリー・オブ・ラヴ〉が絶妙な効果を上げているのも加点。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    子供が一般的には純粋な存在であると見做されていることを逆手にとって天使の皮を被った悪魔を描いてゆくこの映画では、その作品の骨子である二重性を、表面的には親子である近親相姦、表面的には失踪である殺害、表面的には子供である大人など物語の至るところに鏤める。ひとりの男を取り合って女同士が敵対してゆく挿話は古めかしい図式に堕すかもしれないが、25歳の役者によって演じられる9歳の少女の見え方が万華鏡のように変容してゆく様から目が離せず引き込まれてしまう。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    第一作がホラー史に残る大傑作だったためにおのずと期待値は上がる。例の秘密の開示を前提とした続篇はただのモンスターものになりかねず、相当な困難をともなったことが想像される。その結果として本作の中盤以降の残念な展開はあったのだろう。とはいえ、各シーンは丁寧に撮られているので、この規模のホラー映画にありがちなB級感は排され、なぜだか見つづけられるスケール感は獲得している。ファンによる「エスター」の二次創作だと思って見るとちょうどいいのかもしれない。

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