シンデレラ 3つの願いの映画専門家レビュー一覧

シンデレラ 3つの願い

1973年製作の「シンデレラ/魔法の木の実」(別題「灰かぶり姫の三つの願い」)をノルウェーの歌手アストリッドS主演でリメイク。森の中で王子と出会い惹かれ合った勇敢な娘シンデレラは、舞踏会が近づく中、願い事を叶えてくれる3つの木の実を手に入れる。「シンデレラ/魔法の木の実」(別題「灰かぶり姫の三つの願い」)は、チェコ近代散文の祖の一人ボジェナ・ニェムツォヴァーによるメルヘンを土台にしている。弓や乗馬が得意なシンデレラをアストリッド Sが、厳しい継母を「マザーズ」のエレン・ドリット・ピーターセンが演じている。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    誰もがものの数秒で思いつきそうな、主体的で王子以上に「男らしい」シンデレラ像は、あまりにも安直で現代性に媚びたアップデートにとどまっており、じゃあルッキズムや王子様幻想は放置していいんですか? などと意地悪く突っ込みたくなってしまうし、わずかな改変を施すだけで、なぜほぼ誰もがすでに知っている物語を新鮮に語り直すことができると考えたのか、理解に苦しむ。低予算ゆえにビジュアル面の迫力が望めないのは仕方ないとしても、もう少しできることはあっただろう。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    シンデレラといってもチェコの作家によるメルヘンを土台とした東ドイツとチェコスロバキア合作「シンデレラ/魔法の木の実」のリメイク。乗馬が得意なシンデレラというのはなかなか新鮮で、冒頭付近の雪原で馬を走らせるシーンなどは、とても気持ち良く、実に晴れやか。囚われているはずのシンデレラが、しかし自由でもあるという美しくまた、本作の根幹になる重要なシーンだ。反対にむしろ王子のほうが不自由で、シンデレラのほうが王子を救うという点が本作を今描く意義だろう。

  • 文筆業

    八幡橙

    誰もが知る既存の枠を土台に今、敢えて新たに練り直すならば、オリジナルからは思いもつかない斬新な展開や鮮烈な人物像、再生に意味を持たせる価値観の刷新を期待したくなるところ。だが本作の場合、原本の筋にぱっと思いついた当世っぽい要素を単純にまぶしてみました(例えば付けヒゲとか!)みたいな安直さばかりが印象に残った。コンプライアンス的目配せも、最後にまとめて片付けとけばいいといわんばかりの粗雑さが。せめて旧作の童話風趣きと爽快感さえ残されていたら!

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