アンニョン、僕のユーレイ様の映画専門家レビュー一覧

アンニョン、僕のユーレイ様

失敗続きのポンコツ青年と見習いの女幽霊が騒動を繰り広げる韓国ラブコメディ・アニメーション。ホラーなのに絶叫ゼロ、笑い100%の青春物語。ポン・ジュノ、ホ・ジノらを輩出した韓国映画アカデミー(KAFA)の長編課程(2015年)アニメーションコースの修了作品として、チョン・ヨンソク監督が制作した。奇抜なシチュエーションながらも、若者たちがキャンパスライフで経験する泣き笑いと、人間的(霊的?)な成長が等身大で描かれる。日本未公開の韓国アニメ5本を特集する「Cinem@rt韓国アニメセレクション」(シネマート新宿/心斎橋にて2023年1月27日から)にて上映。2022年12月23日(金)から「おうちでCinem@rt」にて先行独占配信。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    とても新作には見えないアニメの絵柄には明らかに改善の余地があるように思われるが、日本以上に加熱している韓国での受験戦争というキャッチーな要素をまぶしつつ、ホラーとラブコメを思わぬ形で結びつける設定は抜群に面白い。貞子や口裂け女にギャグの小ネタとしてオマージュが捧げられている点も、近年のJホラーにもみられるコミカルな演出として目をひくし、枠組が荒唐無稽な分だけ、内容はむしろベタすぎるほどにベタに振る判断も、個人的にはうまくいっているように感じた。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    見習い幽霊と霊感だけは強い青年との間でなされる、超常現象を題材としたラブコメディだが、徐々に惹かれ合う二人やライバルの妨害など、新鮮味のないベタな展開ばかりで、ラブコメ映画としてはありきたりな通常現象という印象。ただ、ベタな展開だからつまらないかと言えばそうではなく、むしろお決まりの展開をそれはそれで楽しめるのがラブコメ映画の大きな魅力だろう。そういう意味では本作も十分に楽しめるかもしれない。ただ他にもたくさん傑作ラブコメはある気はするけれど。

  • 文筆業

    八幡橙

    過去に制作された修了作品が今、日本で特集上映されるとはさすが、俊英を輩出してきた韓国映画アカデミー。序盤こそ脱力度100%の作画とパンマル(ため口)も若々しい台詞の応酬にやや面食らったが、その素朴さが観る者をいつしかぐいぐい惹きつけてゆく不思議なチャーム溢るる快作。スター幽霊の貞子アリ、オーディションを審査するJYP&ヤン社長アリのパロディを筆頭に、細かいところでくすぐり倒すセンスが憎い。キャラと会話で魅せる脚本の盤石さに、原石の輝きを見た。

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