FALL フォールの映画専門家レビュー一覧

FALL フォール

高所で孤立した2人の女性がサバイバルを繰り広げるスリラー。事故で夫を亡くしたベッキーを立ち直らせようと、親友のハンターが地上600mのテレビ塔へのクライミングを計画。2人が頂上まで到達した直後、梯子が崩れ落ち、地上に戻れなくなってしまう。出演は「シャザム!」のグレイス・フルトン、「ハロウィン(2018)」のヴァージニア・ガードナー。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    ワンシチュエーションでここまで押すならもう少し短くするべきだったとは思うものの、随所に工夫の跡がうかがえる意欲作であることは間違いない。ドローン、スマホ、自撮り棒といった現代的なガジェットを有効に活用しながらも、同時にきわめて限定された空間を舞台に、上昇と落下というシンプル極まりないアクションだけで何ができるかという古典的ともいえる問いをストイックに追求している。文字通り手に汗を握るスリルを味わえる、私のような高所が苦手な人間には恐すぎる一本。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    遠景ショットでは緊張感が弱くなる点は惜しいが、落下のスリルだけで映画を撮り切ろうとする姿勢は好感が持てる。超高層鉄塔の頂上という限られた水平方向のスペースと、どこまでも落ちていける垂直方向の空間の妙も単純でありながら面白い。ただし、誰が見てもツッコみたくなるあり得ない行為を描きつつ、それに対して映画自らがつまらないオチをつけてしまうのはもったいない気もした。臨場感を売りにする本作にあって、あり得なさと真実味のバランスは極めて重要なはずだから。

  • 文筆業

    八幡橙

    大海原に取り残される「オープン・ウォーター」やスキー場のリフトで極寒と闘う「フローズン」など局所的パニック映画の系譜を継いだ高所恐怖ムービー。従来の要素にユーチューバーの無謀さや、身を助けも滅ぼしもするSNSの功罪、最新機器としてのドローンなど現代的あれこれを盛り込み、細かな伏線を逐一回収する脚本は見事。ヒヤヒヤさせる演出も巧みで、比喩でなく手に汗握った。ただ、開きっぱなしの胸元以上に、彼女たちの複雑な関係や心情にこそ深く迫ってほしかった気も。

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