エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの映画専門家レビュー一覧

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

製作・配給スタジオ「A24」史上初、全世界興収1億ドルを突破したアクション・エンターテイメント。家族の問題とコインランドリーの経営に悩むフツーのおばさんが新たなヒーローとなり、マルチバース(多元宇宙)と連結、カンフーを駆使して全人類を救う物語。監督・脚本は「スイス・アーミー・マン」でサンダンス映画祭最優秀監督賞を受賞した2人組〈ダニエルズ〉。主人公のエヴリンには「グリーン・デスティニー」「シャン・チー/テン・リングスの伝説」のミシェル・ヨー。夫のウェイモンドには、「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」「グーニーズ」で天才子役として名を馳せ、20年ぶりにハリウッドに復帰したキー・ホイ・クァン。それぞれ、第80回ゴールデン・グロープ賞(ミュージカル/コメディ)で主演女優賞、助演男優賞を受賞。第95回アカデミー賞にて作品賞を含む最多10部門11ノミネート。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    アバターの衣裳を着替えるようにマルチバースを自在に飛び回れるからこそ、かえってニヒリズムへと至ってしまう娘と母が対峙するなかで、俳優や登場人物たちの多様な出自や性志向、体型、年齢をただ配慮するだけでなく、交換不能なものとして真に肯定するための道筋が開かれていく。異様な情報量こそネット時代ならではだが、奇想に満ちたユーモアのセンスと哲学は、本質的にヴォネガットやダグラス・アダムスのSF小説に近い。あまりにもいびつな生命讃歌に、爆笑ののちボロ泣き。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    根本的なところからわかり合えない映画だった。最強に“変”で馬鹿馬鹿しい行動がマルチバースをジャンプする燃料になるという設定だが、おかしなことをやると宣言してからおかしなことをすること以上に滑稽なことはなく、作り手は、これが最強に変で馬鹿馬鹿しい行動だと思っているのか……と、見るたびに気持ちが離れていってしまった。また、いろんな世界をごちゃまぜにしなくても、この一つの世界、人生のなかにとても豊かなカオスを見出す、そういう姿勢のほうが私は好きだ。

  • 文筆業

    八幡橙

    なんと絢爛たる、極彩色の、めくるめく多次元宇宙人生曼荼羅! ミシェル・ヨーはじめキャスト各人のきめ細かな全身芸も、日常からとんでもない宇宙へ吹っ飛ばされる浮遊感も、引用される「花様年華」も「2001年宇宙の旅」も、すべてが時の重みを伴って愛おしく、芯の芯へとブッ刺さった。極限まで削ぎ落とされた、石と石の禅問答。そこに浮かぶ哲学。何周も廻って今、目の前の現世だって悪くない、という慈しみ深いメッセージ……。一度では味わい尽くせぬ怪作にして、快作哉。

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