I AM JAM ピザの惑星危機一髪!の映画専門家レビュー一覧

I AM JAM ピザの惑星危機一髪!

俳優の辻凪子が監督・主演を務め、数々の名作無声映画にオマージュを捧げたサイレントSFファンタジー活弁映画。コメディエンヌを夢見るジャムはある日、大嵐に襲われ、ピザの惑星へ。ジャムは、そこで出会った王様から、全銀河の運命を託されることに。共演は「梅切らぬバカ」の塚地武雅、「あさひるばん」の間寛平。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    いろんな映画があっていいと思う。活弁付き新作無声映画があったっていい。でも、どうして無声映画なのか、どうして活弁なのかが伝わってこなかった。そもそもなぜ無声映画と活弁が好きなのかも。このスタイルを選択するということは、今の映画のありように何らかの息苦しさを感じているからのはず。なのに、その批評は微塵も感じられない。寓話というのも何か語るべきもののメタファーのはず。それも全く読み取ることが出来ない。84分が長い。スタイルの前に映像と物語の強度をまず。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    チャップリンもキートンも自作自演、つまり監督であり脚本家であり主演であったわけだから、コメディエンヌをめざすという辻凪子が監督・脚本・主演で無声映画を作ったとして何の不思議があろうか。映画が身体表現であることを身をもって示し、そこに作家性を刻みこむことに何の不都合があろうか。「映画がなかったら僕は何なんだろう」というつぶやきが耳に残るのは、チャップリンやキートン作品同様にこの作品も個人の創作意欲と映画が幸福に出合っているからに違いない。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    マーケティングだのコンプライアンスだのを重視し、誰でもそれなりに体裁の整った映像作品を撮れる時世に、敢えて手づくり感満載の奇天烈な題材を初長篇に選ぶあたり、驚嘆ではある。“スペシャルサンクス”に名を連ねる錚々たる顔ぶれに教えを乞い、「月世界旅行」など数々の無声映画を研究した上で、新しい何かを志す気迫は存分に伝わるが、オマージュやパロディの領域に達しているかといえば疑問が残り、何よりも、映画や笑いの素晴らしさに結実していない仕上がりが切ない。

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