ワイルド・ロードの映画専門家レビュー一覧

ワイルド・ロード

「エクスペンダブルズ2」「トゥームレイダー」のプロデューサーが放つ絶体絶命ノンストップ・アクション。組織の金を奪い、長距離バスに乗り込んだフレディに、女ボスの執拗な追手が迫る。停車するターミナルごとに待ち受ける罠と怪しい乗客たち。撃たれた傷から出血し、意識は途切れていくが……。主演は、マシン・ガン・ケリーの名でラッパーとして活動し、俳優として「囚われた国家」「プロジェクト・パワー」などに出演するコルソン・ベイカー。そして、ハリウッドの元祖カメレオン俳優ケヴィン・ベーコンが、主人公の父親役を底知れぬ怪しさで演じる。「ウォークラフト」のトラヴィス・フィメル、「透明人間」のストーム・リード等が脇を固めた。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    ほぼバスという閉鎖空間とスマホでの通話だけで物語を完結させるという挑戦的な試みはうまくいっていない。多彩な通話、止まらない出血、ケヴィン・ベーコン演じる存在感十分な父親との駆け引きなど、手数は十分すぎるほどに打っているが、隙間の時間をなくせばサスペンスが成立するというわけではないだろう。座席で主人公が見る幻覚や、少女を狙う怪しげな乗客をめぐる仕掛けも、画面の単調さをなんとか補おうとして入れてみた小ネタの域を出ず、有機的に機能しているとは言えない。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    ほとんどが長距離バスという空間的に限定され、行動に縛りもあり、しかも主人公が映画開始から既に瀕死という状態で、どのようにアクションやサスペンスを展開させるかが腕の見せ所だと思うのだが、あまり有効な策はなかったように見える。同じような画が続き、展開もほとんど一本調子で、最後まで映画がドライヴすることなく終わってしまった印象。長距離バスの中という自ら選んだルールに行儀よくしたがってしまい、結果とても小さくて魅力の乏しい映画になっている。

  • 文筆業

    八幡橙

    前号の「ナイトライド」が運転する車なら、本作は乗り込んだバスの中。そこからつながる電話が事態を刻々移ろわせ、主人公の命運を左右する。無駄に動き回らぬ、今日的な省エネ・アクション。映像のトーンや音楽、夢と現を漂う思わせぶりな演出など、特異なムードは悪くないが、女ボスを巡る主人公と父親(ケヴィン・ベーコンが怪演)の関係や、別れた妻子への思いなど肝心な点までがムードに巻かれうやむやに。黒人少女に我が子を投影するならなおさら、来し方を堅実に描いてほしい。

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