ファイブ・デビルズの映画専門家レビュー一覧

ファイブ・デビルズ

「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロス主演で贈るタイムリープ・スリラー。嗅覚に不思議な力をもつ少女ヴィッキーは、叔母との出会いで新たな能力が開花。母と叔母の封じられた記憶にタイムリープする。それが家族の運命を変えることに……。アルノー・デプレシャン、ジャック・オディアールなどの下で脚本を手掛けてきたレア・ミシウスの日本初公開監督作。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    小さな町の話。主人公の女の人はどことなく不機嫌。何かあったんだろうなと予感する。娘は匂いに敏感。何の匂いかすぐ言い当てる。設定だけで期待が膨らむ。片目の潰れた女が紫色の唇で「シャーッ!」と叫ぶ。おもろそう。夫の妹がやってきてから話が動き出す。謎の妹。意味深な言葉の数々。娘が突然タイムスリップする。理由はよく分からない。そのせいで過去の出来事が徐々に明らかになっていく。キッチンで蛸をバチンバチン叩きつけて料理する二人の芝居が妙にエロい。

  • 文筆家/俳優

    唾蓮みどり

    語られない多くのこと。見えないことで想像させる手法は、バランスこそが命である。そして本作におけるそのバランスは絶妙で素晴らしい。匂いを集める少女。少女が昔から見える叔母。過去に秘密を抱えた母という3人の女と、女同士で二人の子を作るために利用された(かもしれない)ひとりの男。残酷さが浮かび上がると途端に興味深い。香りを集めるという設定自体がとてもフェティッシュで官能的でもある。何度も観て謎を紐解いていきたい。アデル・エグザルコプロスの魅力が全開。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    ヴィッキーがしているのは、精神分析的な意味での「原光景」の探究である。原光景とは自分の存在の起源にある光景、つまり両親の性交のことだが、両親の間に性生活が成立していないとすると、それ以外のものの中に原光景を見出さねばならない。それがヴィッキーが直面する矛盾の最たるものだ。というわけで、ここで映されるのはすべてが性交のメタファーである。匂いを嗅いで失神するのも、ワセリンを体に塗りたくるのも、カラオケのデュエットも、木に火を付けるのも、なにもかも。

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