ノースマン 導かれし復讐者の映画専門家レビュー一覧

ノースマン 導かれし復讐者

「ライトハウス」のロバート・エガース監督によるファンタジー・アクション。9世紀、北欧のとある島国。10歳で叔父に父を殺され、母を連れ去られた王子アムレートは復讐を誓い、ひとりで島を脱出する。数年後、彼は獰猛なヴァイキングの戦士となっていた。出演は、「ゴジラvsコング」のアレクサンダー・スカルスガルド、「スキャンダル」のニコール・キッドマン、「ザ・スクエア 思いやりの聖域」のクレス・バング、「ウィッチ」のアニャ・テイラー=ジョイ、「ブラック・フォン」のイーサン・ホーク、「ライトハウス」のウィレム・デフォー、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のビョーク。
  • 映画評論家

    上島春彦

    原「ハムレット」+「コナン・ザ・グレート」=本作。ファンタジーというよりフェティッシュで呪術っぽい意匠を強調するのが独創的。そういう伝説(サガ)の伝統がずっと昔からあり、それを汲み上げて新たな物語にしつらえるわけだ。拉致される主人公の母親にはまた彼女なりの思惑もあって、妙に現代的な感覚なのが絶妙。もっともリチャード・フライシャーのファンから見るとアクションが弱い。主人公を殺せるときに殺さなかったのも、話としては分かるが演出が伴わず間が抜けている。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    ロバート・エガースは「ライトハウス」について、ふたりの男が巨大なファルスに閉じ込められて男性的な衝突が生じてゆく“マスキュリニティ”の物語だと語っている。本作は復讐の名のもとに過剰なまでの男性性が暴発してゆく作品ともいえるが、決して無邪気に扱われているわけではないだろう。しかしこのスペクタクル大作を経て、エガースには「ウィッチ」や「ライトハウス」といった過去作のように、アートハウス系映画でその作家性と美学を追求していってほしい気持ちも拭えない。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    正月休みでゆるんだ身体に血潮をめぐらせてくれる、これぞ映画という体験であった。自分が一体何を見ているのか、とにかくわからない。ハムレットを想起させる復讐譚ということはわかるのだが、安易な理解をこばむ出来事たちが淡々と積み上げられ、それが世界そのものに近づいていく。ビョーク演ずる魔女の切り返しなんて何? そして恐ろしいことにこれらのカオスはロバート・エガースの高度な演出によって隅々までコントロールされている。こんな監督がアメリカから出てきた驚き。

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