チーム・ジンバブエのソムリエたちの映画専門家レビュー一覧

チーム・ジンバブエのソムリエたち

    “ワイン真空地帯”ジンバブエ出身のソムリエたちが世界最高峰のブラインドテイスティング大会に挑む姿に密着したドキュメンタリー。トップソムリエたちが火花を散らす選手権会場にカメラが潜入。“チーム・ジンバブエ”のメンバーは、ジンバブエから南アフリカに逃れた難民かつ黒人の4人。果たして波乱に満ちたワインバトルの行方は? 監督は「世界一美しいボルドーの秘密」の製作・監督・脚本のワーウィック・ロスと、同作品でエグゼクティブ・プロデューサーを務めたロバート・コー。
    • 映画評論家

      上島春彦

      今年はワインの当たり年か。立て続けに関連映画が続くね。その中で今回のはブラインド・テイスティング選手権(銘柄や生産年を味と香りだけで当てる競技)にスポットを当てる。王道と言えば言える。ただし主人公は故国ジンバブエから南アフリカに逃れた難民で構成された四人組。ここが異色。オーストラリアと並び、近年南アフリカは優秀なワイン生産国としてのしてきたものの、ジンバブエにはワイン文化はないそうだ。四人それぞれの立ち位置が面白くチーム感覚の醸成具合も良し。

    • 映画執筆家

      児玉美月

      ワインのドキュメンタリー映画を私がこの枠で取り上げるのは3作目だが、これまでの2作品だけを見ても、やはり映し出される人の多くが中年男性かつ白人で、経済的にも豊かな階層であった。この映画には、はっきりとワインの世界は多様性が乏しいと批判する局面もあり、ワインをめぐる文化が孕むそうした特権的なイメージを打ちこわす。そして、決してワインのみに焦点を当てるのではなく、チームのひとりひとりの抱える現実的に存在するカネや生活の問題まで俎上に乗せる。

    • 映画監督

      宮崎大祐

      またもワイン製造のドキュメンタリーかと思いきや、未知の景色に満ち溢れた至上の映画体験であった。ワインという西洋の伝統文化を非西洋の国から来たソムリエたちがジャックするという、ともすると危ういオリエンタリズムはシステムを内側から突き破るための第一歩として必要で、何より、世界中の人々の数だけ人生があり、それらはいずれも等しく尊く絶対的に肯定されるべきだという当たり前のことを当たり前に描いている映画が今日日どれくらいあるだろう。本作はそんな一本である。

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