泣いたり笑ったりの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
上島春彦
同性カップルの結婚を認める「シビル・ユニオン法」を寿ぐ企画というのはすぐに分かる。啓発的で実に良い。大金持ちの老父の、中年男性との再婚を認めたくない娘がほぼ主人公、というのも分かる。ところがこの娘さんの頑なな心情の根拠が全然わからない、という不思議な映画。法律制定は積極的に支援したものの身内じゃちょっとというんだが。徹底した嫌がらせを執拗に描き、普通に見ているとどうしてこんなあくどいことを彼女がやらかすのか、そっちがかえってヘンな気がする。
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映画執筆家
児玉美月
高齢の男性カップルが直面しうる苦難や障壁を厳しい現実的なまなざしを持って問題提起してゆく……のではなく、あくまでも陽気さを保ったまま、彼らの同性愛が家族関係の至る場所へと飛び火しててんやわんやになる様が描かれる。そんな中で時折、台詞がめっぽう鋭い。「幸運の女神」などのフェルザン・オズペテク作品の系譜にあるようなイタリアのゲイ映画を想像すれば、この映画の輪郭を素描しやすいだろう。「笑ったり泣いたり」ではなく、あくまで「泣いたり笑ったり」なのだ。
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映画監督
宮崎大祐
結婚を考えている中高年の男性カップルがそれぞれの家族を集め理解を求めるが、というお話。軽妙な芝居を照らす、いまどき珍しい「明るい」ライティングはイタリア映画の技術力の高さを見せてくれるし、決して編集で困ることがないであろうカット割りとカバレッジの多さから推測するに、予算も相当かかっているのだろう。ともあれ、こういった物語にありがちな、人それぞれの都合を見せてからのなんとなく家族との和解が成立しました、という展開からのもうひとひねりが欲しかった。
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