ひみつのなっちゃん。の映画専門家レビュー一覧

ひみつのなっちゃん。

3人のドラァグクイーンが仲間の葬儀に参加するため旅する姿を描くロードムービー。新宿二丁目で食事処を営むなっちゃんが死ぬ。ドラァグクイーン仲間のモリリン、バージン、ズブ子はひょんなことから、なっちゃんの母から郡上八幡で行われる葬儀に誘われる。出演は、「さんかく窓の外側は夜」の滝藤賢一、「科捜研の女 劇場版」の渡部秀、「ハケンアニメ!」の前野朋哉、「長いお別れ」の松原智恵子。監督・脚本は、本作が初監督・脚本作となる田中和次朗。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    脚本家の監督作品なのであえて強く書くが、脚本がダメ。会話劇なのだが、会話の面白さを狙っているだけで、そのシーンで物語も人物の感情も次へ動いていかない。一例を挙げるなら、前野朋哉の失恋話。話を埋めるためだけにあって、プチ対立、あっという間の邂逅と何も機能していない。短篇アイデアなんだよね、基本が。だいたい死んだママがドラァグクィーンなのを隠そうとする一人相撲からして、もうバカらし過ぎて。どれだけ役者が頑張っても、一スジ二ヌケ三ドウサは変わらない。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    孤独に死んだLGBTQ+の先輩を見送るために東京から岐阜・郡上八幡の実家へと向かう3人のドラァグクイーンたちのロードムービー。滝藤賢一、前野朋哉、渡部秀という芸達者な俳優がそれぞれに個性的なドラァグクイーンを演じている。感情の起伏を極端に誇張したコメディタッチのドラマがなんとか前に進んでいくのは3人の俳優の手柄だろう。女装するという行為を「隠す」ことと「明かす」ことを巡る人情噺というのはわかるが、いささかくどく、テンポが悪いのが残念。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    旅する3人にとって、故人が恩人であることが前提のはずだが、アッコちゃんさながらのコンパクトにまつわるエピソード以外は人となりを想像させることもなく、その存在感や影響力がいまひとつ伝わってこないため、ロードムービーの情感に欠ける。踊れなくなったドラァグクイーンの再生話としても、なぜ行きづまり、失われかけていた誇りを取り戻すに到るのかの経緯が不明瞭で、母の愛を茶目っ気たっぷりに体現する松原智恵子の名演をもってしても、腑に落ちないものが残る。

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