サイレント・ナイト(2020)の映画専門家レビュー一覧

サイレント・ナイト(2020)

地球最後のクリスマスイブを過ごす家族を描くイギリス映画。ネルとサイモン夫婦と息子たちのもとに、学生時代の親友たちとその伴侶が集まってくる。彼らは再会を楽しんでいたが、地球全土を席巻する謎の猛毒ガスが、明日にもイギリスに到達しようとしていた。出演は、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのキーラ・ナイトレイ、「ジョジョ・ラビット」のローマン・グリフィン・デイヴィス、「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のマシュー・グード、「マリグナント 凶暴な悪夢」のアナベル・ウォーリス、「プラネタリウム」のリリー=ローズ・デップ。監督・脚本は、ローマン・グリフィン・デイヴィスの母親であるのカミラ・グリフィン。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    コロナや気候変動といった時事的な要素を取り入れることで、すでに山ほど存在する似たような映画から差別化を図ろうとする狙いはわかる。だが、ワクチンをはじめとするコロナ対策を揶揄するためなのか、なぜ誰もが政府や科学者の指示に黙って従うのかがほとんど説明されないため、作品の核となる設定がまるで納得できないものとなってしまっている点が致命的。緑の党と保守党をめぐるギャグだけは笑えたが、左右陣営双方を冷笑するようなユーモアのあり方にも個人的に全く乗れず。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    人類滅亡を目の前にして、描くべき瞬間はそれでいいのかと終始疑問で、本作で描かれる場面はどれもあまりピンとこなかった。設定がどんなものでも、描かれるリアクションや感情は真に迫るものであってもらいたいと思う。しかし本作のクライマックスとでもいうべき、もう後戻りできない自決の際で、急にコミカルな演出をして登場人物たちに対して一歩引く態度も好きではない。極限的な状況における絶望感も悲しみも煌めきも滑稽さも、すべてが中途半端に感じてしまった。

  • 文筆業

    八幡橙

    ほぼ主演と言える「ジョジョ・ラビット」のローマン・グリフィン・デイヴィス(双子の弟たちも出演)の実母、カミラ・グリフィンのデビュー作。アットホームな聖なる夜に終末の絶望と葛藤を盛り込んだ設定は面白く、意欲も十分伝わるものの、脚本の弱さがネックに。集まる曲者たちの背景とキャラが捌き切れず、尊厳死を巡るテーマ自体ぼやけてしまった。人類を滅亡させる毒ガスの正体すらわからず、終盤の危機感も脆弱に。同じ最後の晩餐なら、「ドント・ルック・アップ」に軍配。

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