MEN 同じ顔の男たちの映画専門家レビュー一覧

MEN 同じ顔の男たち

「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランドが、「ロスト・ドーター」のジェシー・バックリー主演で贈るホラー。夫の死を目撃したハーパーは、心の傷を癒すため、イギリスの田舎街を訪れる。だが、その街で出会った男たちは、すべて同じ顔をしていた……。共演は「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」のロリー・キニア。
  • 映画評論家

    上島春彦

    ここ数年、気になっていた浮き彫り彫刻が教会場面でドンと出現し、驚く。プレスで“シーラ・ナ・ギグ”という名称を初めて知った。なぜ気になっていたかというと、これは古事記に出てくるアメノウズメノミコトの陰部露出(そのおかげで世界に陽光が再来する)に通ずるイメージだから。洋の東西問わずエロ本屋さんの女神みたいな存在はいるのだ。しかしこの映画では和合を祝うのでなく、禍々しい単性生殖の極限として解釈され、クライマックスに現れる。ここだけでも必見の価値あり。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    女性が受けうる差別や加害などを、露悪的なまでに暴き出すアレックス・ガーランドの新作は、宗教的な寓意とルックはダーレン・アロノフスキーの「マザー!」を彷彿とさせ、デイヴィッド・リンチの「ブルーベルベット」のように蠢く不気味さを孕み、ラース・フォン・トリアーの「アンチクライスト」からの引用をも厭わない。過去作である「エクス・マキナ」をフェミニズム映画として捉え、それを踏まえた上で観ているかどうかによってもかなり印象が変わりそうな劇薬的な映画である。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    ヒロインが受ける男性的暴力の歴史に実在論やポスト・ヒューマン的世界認識が絡んでくる。それにしてもアレックス・ガーランドという映画作家はつかみづらい。才気走った演出力やカット割りの精度があるわけではなく、脚本家出身のわりには構成力があるわけでもない。ただし、毎作品必ず一箇所は忘れがたいシチュエーションと強烈なオーディオ・ヴィジュアル体験を用意している。たとえ一瞬であってもそのような体験をもたらすことが出来る映画作家はいま世界にどれほどいるだろう。

1 - 3件表示/全3件