Never Goin’ Back ネバー・ゴーイン・バックの映画専門家レビュー一覧

Never Goin’ Back ネバー・ゴーイン・バック

「レディ・バード」「ミッドサマー」の制作・配給会社A24が贈る、エネルギッシュでおバカな2人の青春ガールズムービー。テキサスのワンルームで同居するアンジェラとジェシーは、夏の旅行のために新しいアルバイトを増やすが、なぜかトラブルが連発してしまう。女優歴15年のオーガスティン・フリッゼルの自伝的作品で、両親の離婚によって住む家もなくした頃の暗黒時代を「困難のなかサバイブする女子たち」の明るい映画に変換、本作で監督デビューを果たした。アンジェラを演じたのはマイア・ミッチェル。オーストラリアの人気子役出身で、ディズニー映画「ティーン・ビーチ」シリーズなどで知られる若手俳優。ジェシー役には、モデル出身のアメリカ人、カミラ・モローネ。名優アル・パチーノの継娘であり、ブルース・ウィリス主演の「デス・ウィッシュ」に出演している。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    貧困、親の不在、ドラッグの蔓延といった、一見殺伐とした物語と結びつきそうな設定を用いつつも、攻撃性や差別とはまるで結びつかない陽性のユーモアのみで作品を成立させている点が現代的。憎めない人間味に溢れたバカたちが披露するドラッグ絡みの小ネタや振り切った下ネタには大いに笑ったが、あからさまに誰も傷つけない笑いとシスターフッドを押し出す姿勢には、流行の要素を押さえようとする小狡さも感じてしまい、個人的に抱いてきたA24への不信感が改めて強まりもした。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    バカンスどころか、トイレすらまともに行くことができない、二人の女の子のどうしようもない青春。しかし、劇中のセリフにもあるように、そんなどん詰まりの世の中にあって、彼女たちの「底抜けに明るい性格こそが唯一の救いだ」。という店長の彼女たちにかける言葉さえ、ハイになってろくに聞いていないところがまた良い。ファーストショットから悪童っぷりを遺憾なく発揮し、最後まで底抜けにダーティーであり続ける彼女たちはビーチリゾートに差し込む夕日よりも眩しい。

  • 文筆業

    八幡橙

    女優でもある監督の暗黒時代を笑い飛ばす意図で作られたそうで、なるほど微塵も暗くも辛くも深刻でもなく、徹頭徹尾バカバカしい青春コメディに仕上がっている。主演二人の愛らしいバディぶりも、しょっぱいながら壮大な先の読めない夏の冒険も、観ている分には痛快で単純に面白い。ただ、ドラッグ、ゲロ、脱糞、犯罪スレスレの悪さなど、連発される不浄ネタを不快から快へと転じさせ奏功させるには、やはりどん詰まった現実をもう少ししっかり見せて欲しい……と思うのは、野暮!?

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