そばかすの映画専門家レビュー一覧

そばかす

「恋愛至上主義」が常識化した社会で、他人に恋愛感情を抱かない一人の女性が、恋人を作ることや結婚を勧めてくる周囲と向き合い、自分と向き合い、さらには将来にも向き合いながら、「自分は何者で、自分の幸せは何なのか」を発見していく姿を描く。ゲイのカップルに焦点を当てた2020年公開作「his」のアサダアツシが企画・原作・脚本を務め、劇団「玉田企画」の玉田真也が監督、「ドライブ・マイ・カー」の三浦透子が主演の蘇畑佳純を演じた。共演は、前田敦子、坂井真紀、三宅弘城、伊藤万理華、伊島空、前原滉、北村匠海、田島令子。第1弾「わたし達はおとな」、第2弾「よだかの片思い」に次ぐ、等身大の女性のリアルをつむぐ映画シリーズ【(not) HEROINE movies】=ノット・ヒロイン・ムービーズの第三弾。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    恋愛感情もない性欲もない主人公。しかし親や周りはやれ結婚と普通を押しつける。王子に選ばれて満足なのかと作り直すシンデレラ話。トム・クルーズのベストは「宇宙戦争」で、他のトムの走りは何かに向かっているけど、これだけはただ逃げ続けているからと言う。小ネタと言えば小ネタだが、その使い方が上手い。「あのこは貴族」に届かなかったのは、普通を最初から拒んでいるからか。しかし、ありのまま存在するという、より難しいテーマに挑んでいるから仕方ないか。名古屋弁がヘン。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    恋愛感情を抱くことができない人を題材にしているが、偏見を排し、濁りのないリアリズムで撮っている。三浦透子が演じる30歳前後のひとりの女性が自分らしく、ナチュラルに生きていくこと、それを描くことに集中している。彼女のジェンダーなどどうでもよくなるし、どんな性自認の人にも訴える力がある。多くの人が無意識にもつ同調圧力を的確にとらえ、上辺だけをつくろう社会を撃つ。友人たちの心変わりにドラマとしての唐突さもあるが、主人公の心情は鮮やかに出ている。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    不本意なお見合いで出逢った似た者同士が、いかなる関係性を育むのか目を引くも、早々に男性が恋心を抱き脱落し、いささか拍子抜け。事情を背負う者は地元に戻るというステレオタイプな設定の中、いかにもワケありの同級生やゲイの友人ら興味深い面々を配し、多様性を謳うスタンスを覗かせはするが、それぞれは掘り下げられぬままに通り過ぎる。せめて、主人公が自らを投影した『新説・シンデレラ』の概要ぐらいは見せてくれなければ、本作を撮る意味すら半減するのではないか。

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