アムステルダムの映画専門家レビュー一覧

アムステルダム

「世界にひとつのプレイバック」「アメリカン・ハッスル」のデヴィッド・O・ラッセル監督が1930年代の実話を基に描く、世界の歴史を変えた陰謀の裏側に迫る、愛と友情のクライム・ストーリー。医師のバート、看護師のヴァレリー、弁護士のハロルドの主役の3人を、クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントンが演じた。またラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロら豪華キャストが集結している。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    時代考証と人種や性をめぐる現代性を両立させつつ、久々の新作で今改めて真正面から高らかにアメリカの理想を謳う姿勢には胸を打たれたし、これまでとは一味違った役柄を演じるマーゴット・ロビーも良い。だが、特にデ・ニーロ登場以降の実話に寄りかかるような物語のまとめ方は、持ち前のユーモア以上に、前作発表以降のトランプ時代への優等生的な応答の要素を必要以上に強調するものとなってしまっている。はじめて組んだルベツキの持ち味があまり発揮されていない撮影も今ひとつ。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    過去に起きたラッセル監督のハラスメントや、姪への性暴力疑惑が取り上げられている。現在、こういった映画“外”のことを無視し映画そのものを見ることは不可能に近く、複雑な心境で見るしかない。本作は豪華俳優陣たちの共演が売りなのでなおさらだ。なお、絶妙に脱線を重ねズレていく監督流の会話術は本作でも健在。だがズレていった先に一体何者なのかもわからず、ここがどこかもわからない、というような最良のラッセルが描く真の複雑さは獲得出来ていないように見えた。

  • 文筆業

    八幡橙

    絢爛なる面子、監督得意の歌と踊りが与える躍動と昂揚、ギミックもありつつ驚くほど真っ直ぐな社会的、かつ個人的なテーマ、鑑賞後ひたひた漂う多幸感……。純粋に映画だけを評するなら、平均以上というか、正直大変面白く観た。デ・ニーロの演説に、大いに「今」を感じたし。ただ、愛や友情や権力に屈しない姿勢の意義を謳い、こちらもそこに感じ入ったならなおさら、背後に潜むハラスメント案件が心濁らせ澱ませるのも、また事実。今に続く堂々巡りの自問含め、一見の価値はあり。

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