猫たちのアパートメントの映画専門家レビュー一覧

猫たちのアパートメント

    ソウル市内のマンモス団地で暮らす250匹のノラ猫たちの引越しを2年半にわたり捉えたドキュメンタリー。老朽化による再開発が迫る遁村団地には、住民たちに見守られて250匹の猫たちが住んでいた。果たして、猫たちに新たな安住の地を見つけられるのか。監督は、「子猫をお願い」のチョン・ジェウン。第12回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭正式出品、第4回平昌国際平和映画祭正式出品、第24回ソウル国際女性映画祭正式出品。
    • 映画監督/脚本家

      いまおかしんじ

      猫たちがみんな太っている。毛並みがいい。ちゃんとご飯をもらっているのだろう。のびのび遊んでいる猫たちを見ているだけで微笑ましい気持ちになる。廃墟になろうとしている巨大団地。どんどん人がいなくなる。取り残された猫たち。彼らの日常。猫の目線で街を覗き見しているようなドキドキがある。薬屋のおじさんが猫たち一匹一匹の性格とかよく知っていて、あだ名をつけて可愛がっているのを見ると、猫がいるだけでずいぶん救われている人がいるのだろうと思う。

    • 文筆家/俳優

      睡蓮みどり

      飼い猫ではなくて団地猫。ペットではなくご近所さん。250匹もの猫たちが暮らしているトゥンチョン団地から、彼らの新たな移住先を探す軌跡を追う。自然体で映る猫たちには、人間とは違う時間が流れている。一方で、解体されてゆく巨大な団地群の様子は人間の時間を映し出す。そのふたつは異質だが、交わらなければならない瞬間がくる。猫にとっての幸せとは一体何なのか? そこからはじまる、人間たちの暮らしや未来を模索するこの物語は、厳しくも優しさに包まれている。

    • 映画批評家、都立大助教

      須藤健太郎

      猫、家、女性のコミュニティ。チョン・ジェウンの関心はずっと一貫している。団地の再開発にともない、居住空間は再編成され、コミュニティもまた生まれ変わる。だがそれは人間だけの問題ではない。そこは住人たちが育ててきた大勢の野良猫の住処でもあるからだ。2年半にわたる撮影は、猫の視点をいかにして獲得するかという探究でもあったろう。前作「エコロジー・イン・コンクリート」(17)と対をなすというから前作も見たいが、今作の9時間超のバージョンも見たい。

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