グリーン・ナイトの映画専門家レビュー一覧

グリーン・ナイト

『指輪物語』の作家J・R・R・トールキンが現代英語に翻訳して以来、広く読まれてきた14世紀の作者不明の叙事詩「サー・ガウェインと緑の騎士」を大胆に脚色し、幻想的で奇妙な冒険の旅に出る若者の野望と挫折、愛と欲望を描いたダーク・ファンタジー。監督・脚本は「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」のデヴィッド・ロウリー、製作は「ミッドサマー」「ライトハウス」のA24が手掛けた。未熟でどこか頼りない主人公ガウェインを「スラムドッグ$ミリオネア」や「LION/ライオン~25年目のただいま~」のデヴ・パテルが演じ、「リリーのすべて」のアリシア・ヴィキャンデルが一人二役で共演している。
  • 映画評論家

    上島春彦

    アーサー王伝説というのに詳しくないので、ちらっと原典に当たってみた。読んだ版はアーサー・ラッカムの挿絵だったが、この映画に出てくる緑の騎士とそっくり。グロテスクさを参考にしているだろう。ただし基本的には、伝説を現代人が解釈して再構成する、という雰囲気が濃厚だ。それゆえ、マーティン・スコセッシの「最後の誘惑」的なプロットのひねりが効果を生む。こちらは磔刑ではなく斬首の刑だが。いかにもデイヴィッド・ロウリー的なのは風景がとげとげしくないところかな。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    森のなかに放置された主人公の青年ガウェインからカメラがゆっくりと離れ、360度回転して彼がたちまち骸骨と化すロングテイクなど、「ア・ゴースト・ストーリー」を想起させるような時空間を自在に操るデイヴィッド・ロウリーの手腕は本作でも健在。同時期に公開される「MEN 同じ顔の男たち」も同じくA24作品であり、明らかに男性性がひとつのテーマとして挙げられるが、本作もまた伝統的な冒険譚における「男らしさ」を問い直す作品だとも言えるだろう。高貴な映像美。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    繰り返し申し上げているように、筆者は洋の東西を問わず中世を舞台とした劇全般を苦手としているのだが、ロバート・エドガーズにしろ古くはM・ナイト・シャマランにしろ、期待される若手インディペンデント映画監督たちがキャリア数本目に中世風のファンタジー映画に手を出すこの現象をなんと呼ぶのだろうか。とはいえ、「ピートと秘密の友達」の頃からそのファンタジー志向を隠していなかったデイヴィッド・ロウリーの美意識や俳優への配慮は否定できないレベルに達している。

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