原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たちの映画専門家レビュー一覧

原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち

大飯原発の運転停止命令を下した元裁判長や福島で太陽光発電農業を始めた農業者らによる脱原発活動を追ったドキュメンタリー。定年退官を機に原発に共通する危険性を啓発する活動を始めた元福井地裁裁判長や、放射能汚染によって廃業した農業者の挑戦に迫る。監督は、「日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人」の小原浩靖。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    岸田政権が原発新設を発表した日に本作を観る。ふざけるなと思う。もちろんこの国に対して。2号機4号機が大爆破を免れたのはあってはならない破損があったがゆえの奇跡。伊方原発再稼働を認める原子力規制委員会の茶番。南海トラフ大地震が起こったらどうする気だ。もう無茶苦茶。この映画はそれを余すことなく伝える。誰がための原発。これで、原発をとめた裁判長や太陽光発電をやる農家の、理屈ではない、人間としての根っこさえ描けていれば。そこに映画の臨界点があったのでは。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    原子力発電所差し止め訴訟と営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)という二つの動きを、当事者に密着しながら紹介する。なぜ原発を止めるべきなのか、原発の耐震性は十分なのか、容認派の主張のどこが問題なのか。そんな論点を誰でも理解でき、誰もが議論に加われる形で示そうとする。それが樋口英明元福井地裁裁判長とこの映画の手柄だ。「専門技術訴訟」であるとして主体的な判断を避ける司法だけの問題ではない。我々一人ひとりが主体的に考え、行動すべき問題なのだ。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    独立の気概と平明な理論を拠り所に多様な案件に臨んできた裁判官と、数々の経済事件で名を上げたやり手弁護士。共通点のなさそうなふたりが、大飯原発運転停止命令を下した歴史的瞬間を口火に“生涯の盟友”となる闘いの軌跡が、理不尽が罷り通る世情に光をもたらす。途方もない絶望の日々があったからこそ、有機農業に太陽光発電を組み込む新事業にも敢然と踏み出せる被災者の方々のとびっきりの笑顔に励まされ、いわゆる震災映画とは別格の未来を見据えるバイタリティに感銘する。

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