声 姿なき犯罪者の映画専門家レビュー一覧

声 姿なき犯罪者

「茲山魚譜 チャサンオボ」のピョン・ヨハン主演、韓国でも深刻化する振り込め詐欺に焦点を当てた犯罪アクション。建設現場の従業員相手に振り込め詐欺の電話がかかり、同僚や妻が失った金を取り返すため、元刑事の作業員ソジュンは詐欺集団に立ち向かう。監督は、「ポドリ君の家族残酷史X 韓国の夜と霧」のキム・ソン&キム・ゴクの兄弟。実際に詐欺犯罪を担当する知能犯罪捜査隊に事前取材を行った。元刑事ソジュンをピョン・ヨハンが、詐欺組織の主犯を「悪人伝」のキム・ムヨルが、犯人を追う刑事を「鬼手」のキム・ヒウォンが演じる。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    あまりにもすんなりと振り込みが完了する序盤からは、サスペンスとは無縁の振り込め詐欺は娯楽映画の題材には適さないようにも見えたが、リアリティと同時に誇張を交えながら詐欺組織の内情に焦点を当てることで、良質な潜入ものとしてテーマをうまく消化できている。「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のディカプリオとスティーヴ・ジョブスを掛け合わせたような胡散臭さとバイタリティに溢れた、服装や髪型も完璧な組織のエース、クァクを演じたキム・ムヨルの存在感が出色。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    元刑事が犯人に会ったらどうするかと問われて一言「殺す」とだけ返す潔さが良い。そしてこの潔さを本作は最後まで手放さない。元刑事は振り込め詐欺のコールセンターに潜入し、本来の標的が上の階にいることが分かると、どうにか上の階に行けるように策を巡らすのだが、それの描き方がまるでゲームのよう。ワンステージずつクリアし、徐々に上の階に進めるといったコールセンター攻略は、本作の根底にある、相手をうまく騙す話術の演出に、視覚的な要素を上手く加えている。

  • 文筆業

    八幡橙

    巧妙かつ緻密に仕組まれた大がかりな韓国の“振り込め詐欺”の手口に茫然、戦慄。釜山の建設現場で会社もろとも騙された後、主人公が中国の巨大アジトに乗り込む過程に無駄も淀みも一切なく、導入から引き込まれる。敵陣に潜るスリル、たった一人で繰り広げる死闘、さらに金に踊らされる組織側の人間たちの漫画っぽい描写は、「インファナル・アフェア」+「ダイ・ハード」+「カイジ」的趣きも。ただ、対峙する二人の描き込みがやや表層的で、あと一歩のめり込むには至らず。

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