もっと超越した所へ。の映画専門家レビュー一覧

もっと超越した所へ。

劇団、月刊「根本宗子」を主宰し、岸田國士戯曲賞の最終候補に4度選出された気鋭の劇作家・根本宗子が自らの同名舞台作品を映画脚本化。クズ男を引き寄せる4人の女性たちの面倒くさい感情と、本音をさらけ出して生きる様を痛快に描いた恋愛バトル映画。ダメ恋愛体質の主人公、衣装デザイナー・真知子を前田敦子、その彼氏でヒモストリーマー・怜人をSexy Zoneの菊池風磨。元子役タレント・鈴に「生きてるだけで、愛」の趣里と、あざと可愛いボンボン・富を千葉雄大。ギャルの美和に「サマーフィルムにのって」の伊藤万理華と、フリーター・泰造にロックバンド「OKAMOTO‘S」のドラマー、オカモトレイジ。シングルマザーの風俗嬢・七瀬に黒川芽以、落ちぶれた元子役俳優・慎太郎に三浦貴大と、4組のカップルに個性派が幅広く揃った。泣きわめいたり、もがいたりする女性たちが、ハッピーエンドを<超越した所。>で何をつかみ取るのか……。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    劇中で新型コロナウイルスの話題が出てくるまで、まさか時代設定が現在の物語だとは思わなかった。プロダクションデザイン、スタイリング、台詞、及び台詞に出てくる固有名詞などすべてが時代遅れ。並行して描かれる4組のカップルは、ことごとく憧憬(フィクション映画が要請する原理的欲求)にはほど遠く、かといって「あるある」的な共感を生み出すわけでもない。最初、テーマの「クズ男」は女性視点ということなのかと思ったが、男性から見ても全員クズすぎて頭が痛くなった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    すでにまがりなりにも巣を持つ彼女たちと、渡り鳥のような男ども。いや、鳥ならまだ、跡を濁さず去っていくが、堂々巡りのこのくだらなさは、そのくだらなこそがこの作品の見どころで、イライラしつつじっと我慢。根本宗子の舞台のことはまったく知らないが、4組、8人の男女はかなり特殊で、OLやサラリーマンは一人も登場せず、全員不安定な自由業系。各カップルのグダグダしたやりとりはみな室内で進行、あげく破れ鍋に綴じ蓋の伝で、世は事もなし。女優の方々、お疲れ様。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    相当に面白い。人間観察とキャラ造形がいい。BL好きとか気のおけないゲイの友人がいたらと思う女性に冷や水をぶっかけるような悪魔的千葉雄大とか。また「男たちの挽歌2」以来の、米飯への愛をかきたてる映画。ただラスト十数分、宇都宮釣り天井というか清順的セット解体というかメタ的大技繰り出して、しかし主人公らが回帰を志向するのに、ええーっと驚かされる。この、ええー、は半音下がる。超越しねえ!アイロニーの映画か。あとセックス(描写)はオンにすべきだったと。

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