ワタシタチハニンゲンダ!の映画専門家レビュー一覧

ワタシタチハニンゲンダ!

「アイたちの学校」の高賛侑監督が、在日外国人に対する差別の実態を浮き彫りにするドキュメンタリー。朝鮮学校の無償化除外、技能実習生への人権侵害、難民認定が極端に少ない実情、非人道的な処遇が常態化した入管などを取り上げ、外国人差別の本質に迫る。ナレーションは、フリーアナウンサーの水野晶子が担当。2022年5月28日より第七藝術劇場を皮切りに各地で上映。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    観ている間ずっと怒りに震えていた。この国はどこまで外国人(欧米人除く)に対して残酷になれるのか。その差別的政策が在日朝鮮韓国人から綿々と受け継がれていたとは。自分はなぜ朝鮮学校無償化除外にNOの声を上げなかったのか。それだけじゃない。技能実習生、難民、入管もそう。ワタシタチハニンゲンダと外国人が言う。ならば、これを見て見ぬフリをしているワタシタチハニンゲンジャナイ。こういう映画こそ外国で上映し、この国の最低さを知らしめて欲しい。もうバレてるか。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    出入国管理局の被収容者に対する非人道的な処遇が問題になっているが、そもそも日本における外国人差別の根はどこにあるのか。高賛侑監督は朝鮮戦争を背景にGHQと政府が進めた戦後の逆コースにそれを求める。1949年の朝鮮人学校閉鎖令と51年の出入国管理令。在日韓国・朝鮮人に対する差別は、出稼ぎ労働者や難民といったニューカマーも被る。技能実習生や非正規滞在者に対する人権侵害を、この国の入管政策の流れに沿って明確に位置付けていて、説得力がある。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    民を守るべきはずの法律を、体制側の都合で改変し、解釈をも歪め続けてきた日本近代史は、そのまま差別の歴史でもあるという忌むべき事実を、否応なく突きつけられる。未だ進展が滞る数々の問題を、過去と絡めながら一層深く理解するための教材としても、幅広い世代のあいだで活発な議論が生まれることを望む力篇でもある。差別し排除する側も人間であるグロテスクな恐ろしさや、その根底に潜む闇のようなものにまで踏み込めていたら、さらに傑作になっていたのではとも思う。

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