嘘八百 なにわ夢の陣の映画専門家レビュー一覧

嘘八百 なにわ夢の陣

中井貴一×佐々木蔵之介W主演によるコメディ「嘘八百」シリーズの第3弾。大物狙いで空振りばかりの目利き古美術商・小池則夫と、うだつの上がらない陶芸家・野田佐輔。そんな骨董コンビの前に一攫千金のお宝が現れる。それは太閤秀吉の幻の茶碗「鳳凰」であった。共演は、関ジャニ∞の安田章大、「窓辺にて」の中村ゆり。監督は前2作に続き、武正晴が担当する。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    前作は未見。だから贋作陶芸家としての佐々木蔵之介の腕が分からないのだが、贋作で必ず騙せるというお約束に乗れなかった。そんな簡単でいいのかと。それは劇中、霊感商法に騙される人も同じ。いや、本物も偽物もない、所詮人間の価値観が生み出すものでしかないというテーマは分かるのだ。ただ旧統一教会問題の前に作られたとしても、やはり霊感商法を扱う最低限の礼儀みたいなものは見たかった。テレビのスペシャルドラマなら拾い物。だが前二作を観たいとはついぞ思わなかった。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    うさんくさい霊感商法で繁盛する財団と、バブリーな博覧会実行委。それぞれから持ち上げられて調子に乗っていた古美術商・中井貴一と陶芸家・佐々木蔵之介が、ポイ捨てされるや一転して大嘘で逆転を図る。うだつのあがらない中年コンビが「夢なんて儚いものよ」とうそぶきながらコンゲームに挑む姿に、武・今井・足立のシリーズ3作目のゆとりを感じる。財団の姉弟の成り上がり話に秀吉と大阪の夢を重ねるのはやりすぎという気がするが、そんなおめでたさも正月映画らしい。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    シリーズも3作目を迎えて試行錯誤の末なのかもしれないが、ある幻の名品をめぐり別々にオファーを受けた迷コンビが、それぞれ欲望や思惑に駆られてニアミスを繰り返す前半は、さすがに軽すぎる霊感商法のドタバタ描写も災いし、幾分もたつく。需要と供給のバランス次第で価値が変動する美術界へのシニカルな鋭い視点と、そんな業界の盲点を逆手に夢を掴もうと奮闘する男女にまつわる甘めの人情話が乖離した印象を与えるためか、幾重にも仕掛けを施す結末の切れ味まで鈍った感も。

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