ザ・メニューの映画専門家レビュー一覧
-
米文学・文化研究
冨塚亮平
レストランの空間設計や料理、客のふるまいの細部におけるリアリティを追求することは、前半の風刺的なユーモアとはうまくマリアージュしているものの、後半のより過激な演出とは食べ合わせが悪いと言わざるをえない。バラエティに富んだ客をある程度の人数用意した背景には、おそらく味覚にも嗅覚にも訴えられないなかでコース料理が進んでいく前半がダレ場とならないよう意識したという事情があるのだろうが、物語が転調するにつれ脇役たちの行動にどうしても疑問が湧くように。
-
日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰
降矢聡
「ウィッカーマン」や「ミッドサマー」のような村カルト映画と『注文の多い料理店』が掛け合わされたような映画で、端正なショットとセリフの間合いなどで緊張感を持続させるのは見事。しかし最終的な結末がかなり早い時点から予想できてしまう点や、特にラストショットだが、なによりも画面の見栄えを優先するような画作りは多々気になった。しかし、第一声を発した瞬間に、しょうもないけど、憎めない人間だと感じさせるジョン・レグイザモは最高。彼はいつも最高だけど。
-
文筆業
八幡橙
コース料理仕立ての構成。となれば静かなる助走に始まり、徐々に緊張感を高め、やがて恐怖という名のメインディッシュに突入する、いわゆる序・破・急を勝手に想定して臨んだが、本作は初っ端から主菜をチラ見せすることも厭わぬ潔さが! いわくのありそうな面々が集い、見るからに怪しい密室に閉じ込められ、溜めも起伏もほぼなく、いかにも奇妙な展開を辿る。直截的な社会風刺含めこれが現代の『注文の多い料理店』……なのか!? カーペンターによるB級バージョンが観てみたい。
1 -
3件表示/全3件