犬も食わねどチャーリーは笑うの映画専門家レビュー一覧

犬も食わねどチャーリーは笑う

「凪待ち」の香取慎吾主演、「箱入り息子の恋」の市井昌秀が監督・オリジナル脚本を手がけたコメディ。結婚4年目を迎える田村裕次郎と日和。表向きは仲良しな2人だったが、日和の過激なSNS投稿〈旦那デスノート〉がきっかけで引くに引けない夫婦喧嘩が勃発する。共演は「やがて海へと届く」の岸井ゆきの、「猫は逃げた」の井之脇海。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    「郊外で生活するどこにでもいるような夫婦」を何の違和感もなく自然に演じてみせる香取慎吾と岸井ゆきの表現力は評価に値するが、だからと言って「郊外で生活するどこにでもいるような夫婦」をわざわざスクリーンで見たいと思うかどうかは別の話だ。5年ほど前にネットミームとなった「だんなデス・ノート」に着想を得たオリジナルストーリーは、その題材選びの是非はひとまず置いておくとしても、台詞回しや言葉遊びにおいても全篇を通してうっすらとスベり続けている。

  • 映画評論家

    北川れい子

    妻がSNSで自分の夫を槍玉にあげて悪口三昧とは。いくら理由があったとしても、まるで、いじめの意識もなく乱暴な言葉を投稿する小・中学生並みのレベルで、コメディ仕立てのつもりでも、笑うどころではない。「箱入り息子の恋」ほか、市井監督のオリジナル作品はウェルメイドな娯楽映画として楽しんできたが、今回はただのワル乗り、ワルふざけ。夫の職場はホームセンターで、このあたりの演出は実感があるが、そもそもSNSネタ自体が安易で、映画でスマホ画面など見たくなし。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    単に気の利いたネット文化っぽい憂さ晴らしかと思いきや、そこは越えた。ときに幼く、ときに老成して見える岸井ゆきのがよかったし、それを受ける香取慎吾もなかなか。主役の夫婦の姿は物語の進行とともにどんどんかっこわるく、醜く、陰惨になっていく。マサッチオが描く「楽園追放」の泣き顔の男女。もう破綻と別離が必然のように見える。それに抗する祈りとしての生活小物の列挙、風に舞うビニール袋を追うこと。困難な主題×異様な盛り上がり場面=映画、を志向した作品。

1 - 3件表示/全3件