追想ジャーニーの映画専門家レビュー一覧

追想ジャーニー

配信ドラマ『神様のえこひいき』の主演で注目を集め、映画「愛のまなざしを」「モエカレはオレンジ色」に出演する藤原大祐が映画初主演。高校生の主人公が30年後の自分と追想の旅に出る姿を描いたミステリアスなドラマ。母と喧嘩した高校生の文也は、気が付くと舞台の上にいた。そばには、見知らぬ男がひとり。男は若者のことに妙に詳しかった……。「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」「破壊」などで様々な役柄を演じ分ける高橋和也が30年後の文也を演じた。「明け方の若者たち」の佐津川愛美、「終末の探偵」など話題作が続く高石あかりが共演。「一人の息子」の谷健二が監督を務めた。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    売れない役者が退行催眠で30年前 の自分に会う。どうやら人生の後悔 をなぞり、あわよくばやり直したい らしい。しかし現れるのは女ばかり。この男の後悔は女のことだけなのか。父と娘を経て、母との邂逅。母は息 子の売れない役者人生を全肯定する。このままでいいと。これをやりたか ったならば、女ではなく役者として の後悔に焦点を絞るべきはなかった か。このオチには泣いたが、短篇ア イデアを長篇にするまでには至って いない。催眠の終わりも分からない。後悔の芽は脚本で絶つべし。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    これは映画ではなくて、演劇だと思った。舞台上での芝居をはじめ、客席、舞台袖、ロビーなど劇場内でほとんど完結するこのドラマを、あえてカメラで撮って映画にしたのはなぜなのだろう。中年になった主人公と青年期の主人公が出会うという現実にはあり得ない出来事を、フィクショナルな演劇空間の中で処理しているわけだが、ならばそのまま演劇にすればよい。緊密な会話劇だし、演出も的確で、俳優もうまい。舞台であればもっと緊密で、もっとスリリングになったはずだ。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    それぞれの役回りをわきまえた俳優陣が好演してはいるが、スターへの夢を捨てきれない一方、もはや本業ともいえる別の稼ぎで養育費は滞りなく払い続ける、どっちつかずの主人公の人物像が、こんなはずじゃなかった現在地の悲壮感も、あまりに能天気な幕切れの爽快感も、中途半端にしている。ギリギリやり直しの利くリアリティを求めた末かもしれないが、実世界では、言動の過ちに気づいたところで取り返しのつかぬものゆえ、フィクションと腹を括り、打開策を見出して欲しかった。

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