時代革命の映画専門家レビュー一覧
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米文学・文化研究
冨塚亮平
火炎瓶をめぐる若者たちのやり取りや後半の大学を舞台にした展開はどこかかつての「パルチザン前史」を想起させる一方、政府から存在を特定されないため顔を隠した抵抗者たちが、アプリを駆使してその都度集合離散する闘争のスタイルは、カリスマ的人物の不在とともにきわめて現代的なものだ。特定の人物のドラマに肉迫するよりは、遍在するカメラによってノーバディとしての市民たちが組織する運動の全体像に焦点を当てようとする、そうした現状を反映した構成の切実さが胸に迫る。
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日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰
降矢聡
2019年、香港で起こった民主化を求める大規模な運動は、多くの者が指摘するようにリーダーがいない。立法会を占拠したデモ隊の知り合いに、危険だから退去しようと説得した名もなき女性の言葉がなによりも胸を打つ事実が、そんなデモのあり方を的確に物語っているだろう。また、運動を俯瞰的にとらえたり、中心的な視点を持つカメラも本作には存在しない。事態がどのように進展しているかも定かではなく、ひたすらに権力とぶつかる市井の人々を延々と映し出す150分強。
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文筆業
八幡橙
2019年に起こった、香港大規模デモ。ニュース映像だけでは知り得ない、その渦中にいた老若男女入り混じる“香港人”たちの自由を守りぬくための死闘に、改めて胸抉られる。香港警察による一般市民へのあまりに非道な制圧は、まさに地獄絵図だが、絶望の果てでも世代を超えて思いやり、共闘する人間の姿に何より打たれた。上空より俯瞰で捉える“水になる”作戦と、汚物にまみれ下水を這う地の底からの目線。多角的に捉えられた香港の姿に、今、己の革命とは何か、自責とともに問う。
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