サハラのカフェのマリカの映画専門家レビュー一覧

サハラのカフェのマリカ

    サハラ砂漠の真ん中に佇む、年老いた女主人が切り盛りするカフェを舞台にしたドキュメンタリー。ゆっくりと時が流れる砂漠の日常を幻想的に描き出す。第72回ロカルノ国際映画祭最優秀新人監督賞、第11回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭最高賞受賞作品。監督は、アルジェリアの新鋭ハッセン・フェルハーニ。
    • 映画監督/脚本家

      いまおかしんじ

      猫がちゃんとマリカの問いかけに答えているのに、びっくりした。食べ物とか飲み物とか一体どこから調達してくるのか不思議になるほどなーんもない所。すごい砂嵐。店内は砂だらけ。彼女はずっと客が来るのを待っている。いろんな人が店を訪れては去っていく。常連の男と急に刑務所のこっちと向こうの設定で芝居を始めたのには、笑ってしまった。行方不明の兄を探していると言う客に、娘が死んだ話をするマリカ。嘘だか本当だか分からないその話に、何か感じるものがあった。

    • 文筆家/女優

      唾蓮みどり

      カフェの主人マリカのどっしりとした存在感と砂漠にぽつんとある白い建物のイメージが何度も頭の中でオーバーラップする。カフェを訪ねてくる客たちとマリカのなんてことのない会話が、横にいてぼんやりと聞こえてくるような不思議な距離感だ。物語が見えそうで見えない。くる人くる人にいつも「なぜ?」を問いかけられ質問攻めにうんざりしているマリカ。始まりもなく終わりもないような、何百年とそこにいるような夢のような奇妙な感じがして、静かな興奮とざわめきが生じる。

    • 映画批評家、東京都立大助教

      須藤健太郎

      冒頭のロングショットで傑作を確信。中央上に店を捉える配置といい、左右から順に走り抜ける2台の車のタイミングといい、店へと向かうマリカと彼女に駆け寄る2匹の犬の豆粒大の動きといい、そこに重ねられるタオス・アムルーシュのカビル語による歌唱といい、すべてが息を呑む美しさ。麻袋に刻印された「ネジュマ」の文字はカテブ・ヤシンへの目配せだろう。夜、ラジオから流れるのはB・イーノ&D・バーンの〈コーラン〉。文化の盗用や宗教をめぐるしなやかな議論も視野にある。

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