ギャング・カルテット 世紀の怪盗アンサンブルの映画専門家レビュー一覧

ギャング・カルテット 世紀の怪盗アンサンブル

愉快でとぼけた窃盗団が大胆にも伝説の至宝に挑む北欧発の痛快クライムコメディ。スウェーデンで80年代から大人気のコメディ映画シリーズ「イェンソン一味」を原案とし、「ぼくのエリ 200歳の少女」「裏切りのサーカス」の名匠トーマス・アルフレッドソン監督がコメディに初挑戦した。監督の代名詞ともいえる映像美と緩急のある演出で、シックで洒落た、大人も堪能できるクライムコメディに仕上げている。監督と共同で脚本を手がけ、主人公のイェンソン(通称シッカン)を演じるのは、スウェーデンの国民的コメディ俳優ヘンリック・ドーシン。入念なリサーチと驚愕のアナログテクで狙った獲物は逃がさない、とぼけた中年男を軽妙洒脱に演じ、観客を爆笑と温かい涙に引きずり込む。
  • 映画評論家

    上島春彦

    知らない国の映画を理解するのは難しい。これはれっきとしたスウェーデン映画なのに、ぼんやり見ているとフィンランドによる反スウェーデン・プロパガンダ映画みたいなのである。ネタバレになるので語れないが、そういう屈折を楽しめるかどうか。それがポイント。国民的なクラシック〈夏至の徹夜祭〉も鍵。趣味的な泥棒という優雅なコンセプトに似合っている。犯罪の動機も方法も奇想天外で大いに楽しめるものの、コメディにしてはギャグが少ない。この監督には向いてない印象。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    映画で携帯やパソコンが映るのを好まない。映画において人と人の結びつきを描こうとするときに、お気軽な便利道具を介在させてほしくないからだ。本作もその思想におおむね則っている。トーマス・アルフレッドソンの「ぼくのエリ 200歳の少女」は疑いようのない傑作であり、「裏切りのサーカス」では端正な作風が奏功していたが、この監督は映画にとって何が退屈なのかをよく知っている。はずなのに、原案はスウェーデンで有名らしいが物語そのものに魅力をいまいち感じられず。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    スウェーデン産は何であれ最低限の趣味の良さを保証してくれるはずだという筆者の固定概念を見事に打ち砕いてくれた一品。ウェス・アンダーソン作品から美的センスやユーモアをすべて剥ぎとった代物とでも言えばいいだろうか。どうしたらこんなにも落差のない=「つまらない」ネタや演出を次から次へと「どうですかみなさん、好きなだけ笑ってください、われわれってみなさんと比べると少し変でしょう? 特異でしょう?」という地点から他者に差し出せるのかまったく理解できない。

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