キングメーカー 大統領を作った男の映画専門家レビュー一覧

キングメーカー 大統領を作った男

市民運動家出身、のちに第15代韓国大統領となった金大中(キム・デジュン)と、彼の選挙参謀だった厳昌録(オム・チャンノク)の実話をベースに、光と影、理想と欲望、忠誠と陰謀が渦巻く苛烈な大統領選を描いたポリティカル・サスペンス。名優ソル・ギョングが熱弁を武器とする野党の国会議員キム・ウンボムを、「パラサイト 半地下の家族」のイ・ソンギュンが勝つためには手段を選ばない天才参謀のソ・チャンデを演じ、第58回百想芸術大賞の最優秀男性演技賞、男性助演賞、監督賞の3冠受賞を果たした。共演は金大中のライバル、キム・ヨンホに「梨泰院クラス」のユ・ジェミョン。与党の選挙戦略家に「SEOBOK/ソボク」のチョ・ウジン。監督はソル・ギョングが主演した「名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」のビョン・ソンヒョン。民主主義を力で勝ち取った歴史の重みを感じさせる本格派の政治映画。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    細部にこだわった作りと俳優陣の熱のこもった演技によって、まるで安っぽくなることなく、ハリウッド的なスケール感でわかりやすさとリアルさを両立させた間口の広いポリティカル・サスペンスを成立させており、制作体制における邦画との差を感じさせる一本。当時の韓国の政治を知らずとも楽しめる構成となっている一方で、実話ベースゆえの限界か、終盤はもやもやした展開が続きやや失速気味にも感じられたが、その辺りの問題も巧みな物語の収め方である程度はカバーできている。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    政策を問うたり、政治の腐敗を生真面目に追求する社会派映画の堅苦しさからは程遠く、陣取りゲームを遊ぶように、サスペンスフルに展開する本作はすこぶる面白い。大統領を目指す男の「影」となり、汚い仕事も請け負う選挙参謀を描くにあたり、文字通り影を多用した演出はわかりやすいが、むしろそれはどこまでも政治をゲームとして明快に語る本作の美徳の一つだ。この過剰な面白さは、こんなゲームのような選挙が果たして正しいのか、という選挙のあり方を最終的に問うてもいる。

  • 文筆業

    八幡橙

    まだ実話を基に、こんな映画を制作できるとは。金大中と、その選挙参謀だった人物をモデルに、複雑に絡み合う思惑と奇縁をソル・ギョングとイ・ソンギュンが熱く繊細に好演。綺麗事では済まされない政治の世界。その毒と薬の際どい匙加減を、巧みな脚本とスリリングかつ緩急たっぷりの演出(時代考証含め、画作りも秀逸)で描き切ったビョン・ソンヒョンに拍手を。政治と人、大義と本音、良心と欲。全篇対比の映画だが、特に「光と影」を浮き上がらせるライティングに注目。

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